ルノー・スマートアイランド構想 ポルトガル現地ルポ 真のゼロエミッションへ

公開 : 2019.07.07 16:50

番外編:ビークル・トゥ・グリッドの未来

EVによって脱炭素化を進めるポルト・サントはひとつの例だが、では、EVによる蓄電の規模をさらに大きくするにはどうしたらいいだろう?

フランスでも、ブルターニュ沿岸のベル=イル=アン=メールと、インド洋に浮かぶレユニオンで、ルノーは同様のプロジェクトを進めており、さらには、大陸欧州では初となるこのビークル・トゥ・グリッドのシステムを、初めてオランダのユトレヒトに導入している。

同じような地域限定の取り組みは、フランス、ドイツ、スイス、スウェーデンとデンマークでも行われているが、なぜ英国はそのなかに含まれていないのだろう?

「電力サプライヤーが多いからです」と、ルノーのエリック・フュントゥンは話している。「より多くの困難が伴います」


さらに多くの障害が存在しているが、そのひとつが、すべてのEV(ルノー製EVのほとんども含まれる)がバッテリーから電力グリッドへの電力供給に対応していないことだと彼は言う。加えて、こうした電力供給可能なEVに対する統一仕様が存在しないことから、互換性の問題が懸念される一方で、「ドライバーのマインドセットを変える」必要があるとも話す。

だが、グリッドへの電力供給に対応しているEVのオーナーであれば、所有するEVの余った電力をグリッドへと供給することで、年間300ユーロ(3万7000円)の収入が得られるというインセンティブが存在しており、例え電力供給に対応していないEVであっても、金額はわずかかも知れないが、需要が急増した場合に、充電をストップすることで、年間60ユーロ(7400円)を受け取ることができる。

残念ながら、電力供給に対応していないEVを、後から改造して対応可能にするのは現実的ではないようだ。「作業コストだけでも、とても採算がとれません」と、フュントゥンは言う。

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