ロードテスト アウディeトロン ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.07.07 09:50 更新 : 2021.02.09 23:25
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
アウディが、ジャガーとはまったく異なり、メルセデスとも多少違っているのは、自社初の本格量産EVにおいて、ラディカルだといえるようなデザインを持ち込もうという衝動に抗ったことだ。一見するに、目的の明確な風貌は、フロントの大部分を大きな多角形のシングルフレームグリルが占め、リアはライトの帯が横切っている。いずれのデザイン要素も、現行アウディで見慣れたものだ。おそらくは、保守的な顧客を取り込むためだろう。とはいえ、もっと風変わりなものに仕上げれば、路上で存在感を主張できたはずだ。
そうはいっても、eトロンのフォルムは、空力担当のエンジニアが目標を達成する上で重要な役割を担う。そのシェイプは、完全にフラットなアンダーボディや仕掛けを施したホイール、コントロール可能なフロントグリルの冷却用吸気口などと相まって、0.28のCd値を実現。オプションのカメラ式ドアミラーを装着すると、さらに0.27へ向上する。ちなみに、ジャガーIペースは0.29だ。
プラットフォームは、フォルクスワーゲングループのMLBエボのバリエーション。4.9mの全長はQ7とQ5の中間に位置するが、1.6mの全高はどちらよりも低い。電動パワートレインは、ややパッケージと出力の異なるふたつのモーターを前後に配置し、それぞれギア比が多少違う単段の遊星歯車式トランスミッションを介して前後凛を駆動する4WDとなっている。95kWhのバッテリーは前後車軸間の床下に収められ、そのレイアウトからスケートボードと形容される。
システムの総出力は360ps/57.2kg-mだが、ブーストモードでは409ps/67.7kg-mまでアップ。WLTP基準のテストにおける航続距離は388kmで、ジャガーの470kmにはもちろん、メルセデスがEQCで謳う数字にも及ばない。この走行レンジの30%はエネルギー回生の産物だとアウディでは説明するが、それが作動するのはスロットルオフ時かブレーキング時のみ。ブレーキは、セグメント初のバイワイヤ式を採用した。
エアスプリングとアダプティブダンパーは標準装備で、サスペンションは前後ともマルチリンク。車両重量の公称値はDIN規格で2490kgだが、テスト車の実測値は2569kg。前後重量配分は、発表値通り50:50だった。