ロードテスト アウディeトロン ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.07.07 09:50 更新 : 2021.02.09 23:25
走り ★★★★★★★★☆☆
eトロンの動力性能は、10年前のスーパーサルーンすら負かせるものではない。このクルマが十分な速さを発揮できないのは、その重さによるところが大きい。昨年テストしたジャガーIペースより大きく重いのはもちろん、2017年にテストした7座のテスラ・モデルX90Dよりも重量がかさむのだ。とはいえ、そのフィールは遅いというには程遠い。
ギアボックスをSレンジに入れ、アクセルペダルをキックダウンスイッチを押し込むまで踏んだ場合にのみ、8秒間限定ながら発動するブーストモードでは、409ps/67.7kg-mを発生する。これにより、0-97km/hは5.4秒、0-161km/hは13.7秒をマーク。先に車名を挙げたライバルたちよりは遅いが、大きく水をあけられているのはテスラよりジャガーの方にだといえる。
走り出しのレスポンスがこれよりシャープなEVはあるが、加速はほぼパーフェクト。いっぽう、単速ギアがみせる電気モーターのパワーデリバリーは、おなじみのEVらしいキャラクターだ。速度が上がるにつれて、加速レスポンスは徐々に弱まっていく。それでもなお、80km /h程度までなら実に速く感じられるため、eトロンは高速道路の速度域でも急激にスピードが高まるフィーリングで、もっと上の速度域でも力強さを感じさせ続ける。
バッテリーの回生セッティングは、3段階のプリセットをステアリングホイールのシフトパドルで手動切り替えできる。さらにオートモードも設定し、ナビゲーションのデータやアクティブセーフティシステムのセンサーに基づき、コースティングやエネルギー回生を、前方の状況に合わせて自動的に最適化してくれる。オートモードには多少の慣れが必要だが、任せられるようになれば、ほぼ意図した通りに機能し、スロットルのオン/オフいずれにもほとんどずれることなく追従する。
風切り音やロードノイズの遮音や、走行中の全般的な洗練性はかなりのものだ。一般的なEVの水準に照らしてもきわめて静かでスムースに感じられるモーターの存在に加え、長距離を走るペースでもウインドノイズの侵入が非常に少ないので、113km/h巡航時のキャビンはモデルXのそれよりたっぷり4dB、Iペースと比べても2dBは静かだ。
テストコース
もし、もっとフラットなコースを走らせたなら、eトロンのもっと納得のいく運動性能を引き出せただろう。グリップレベルは十分に強力で、横方向のボディコントロールもみごとで、どちらも2.5トンもあるクルマには一般的に望み得ないものだ。ターンインが鋭く感じられるわけではないが、それでも驚くほど正確で、すばらしく安定し、コーナリングは素直だ。アペックスを越えた先で、モーターのトルクを受け止めるだけのグリップもまた、十分に持ち合わせている。
しかしながら、エアサスペンションとアダプティブダンパーのチューニングは、上下方向のボディ挙動を、ロールほどにはきっちりとコントロールできていない。いったんその巨体が暴れ出せば、それを巧妙に抑えられることはめったにない。しかし、スタビリティコントロールとトラクションコントロールの作動ぶりは上々で、ハードな走りをしても必要以上に干渉することはない。
ブーストモードでは、もっともきつい勾配でも駆け抜けるに十分なトルクがある。ブレーキペダルは、下り坂ではやや食いつきが強すぎる感覚だが、操作はしやすい。
ボディコントロールは、道が平坦なら一貫して上々だが、大きくボディが沈み込むようなところでは、ボディの垂直方向の落ち着きは乱される。
タイトコーナーでも穏やかに曲がるが、抑えが効いている間はロールがしっかり食い止められていて、グリップはバランスに優れ、コーナリング中ずっと路面にがっちり食いついてくれる。
発進加速
テストトラック条件:乾燥路面/気温21℃
0-402m発進加速:14.2秒(到達速度:163.8km/h)
0-1000m発進加速:26.0秒(到達速度:193.8km/h)
ジャガーIペースEV400S
テストトラック条件:乾燥路面/気温21℃
0-402m発進加速:13.1秒(到達速度:174.0km/h)
0-1000m発進加速:未計測
制動距離
テスト条件:乾燥路面/気温21℃
97-0km/h制動時間:2.91秒
ジャガーIペースEV400S
テスト条件:乾燥路面/気温21℃