穴だらけで反対側が見えた ローバーP5Bクーペ 尊敬する祖父が導いたレストア
公開 : 2019.07.13 07:50 更新 : 2020.12.08 10:40
隅々までほぼすべての部分に手を加えた
サンダースはレストア作業の合間に顔をのぞかせた。話はジャガーMk2へと自然に流れた。「ジャガーのレストアは、レストモッドと呼ばれるチューニングの領域に達しました。ボディワークだけでなく、パワートレイン、インテリアや車内のエンターテインメント機器まで手を加えています。イアン・カラムより彼のアイデアの方が先でしたよ。徹底的にアップグレードを施したので、Mk3のエンブレムも付けたんです。しかし、ローバーP5Bクーペはできるだけストック状態を保たせました。唯一追加したのは、ハザードランプの機能くらいです」
メカニカル部分も大々的に修理されている。エンジン本体やリアアスクル、キャブレーターは車体から降ろされ、標準スペックのまま組み直された。厄介なオートマティックは、専門業者へ運んで整備されている。サスペンション周りもすべて分解され、ラバーブッシュを組み付ける前にすべて粉体塗装を施してある。
「交換したり修理したり再塗装したり、手を加えなかった部分はなかったといっていいでしょう。しかし、ボディワークにもかなりの時間を要しましたが、最も大変な作業は一見単純そうに思える作業でした。フロントガラスの取り付けです。この話をした誰もが、グッドラック!と返すほど。何しろガラスをはめるだけで2周間もかかったんです。ゴム製のウェザーストリップは、アフターマーケットの部品そのままでは取り付けられず、調整にかなりの時間が必要でした。ゴムがうまくはまった次は、クロームメッキされたモール類。それも綺麗に取り付けるにはかなり手間取りました」
「理由はわかりません。このクルマは量産車なので、部品はそのままボルトオンで納まるはずなのですが、そうはいかなかったんです。またセパレートヒーターのパイプの取り付けにも苦労しました。ヒーターバルブは新品では入手できないので、慎重に分解し、新しいゴム製のシールに交換してあります。見えない部分ですが」 レストアを進めるほどに、新しい問題が出てくるようだ。
「実際は、かなりシンプルで良い品質を持ったクルマだと思います。われわれはこれまでランボルギーニ・カウンタックやビンテージもののフォード・モデルTなど非常に多岐にわたるクルマのレストアに携わってきました。しかしこのローバーP5Bクーペの修復作業はかなり楽しめましたよ。永遠に作業が続くような気もしましたが、無事に完成してよかったです」