プアマンズ・ロールスロイス

サブフレームが作り直され、ポディの塗装が終わり、その他多くの部品のリフレッシュも済めば、あとは組戻していく作業だ。インテリアの作業に入ると、サンダースがレストアされたというベージュ色のレザー内装パーツを持ち込んだ。「とても安価に仕上げられた代物でした。以前にも手頃な価格を売りにしていた工房にお願いしたことはありましたが、価格相応という、かなり酷いできでしたね」

トレバーはかなり辛口だった「あんなパーツをクルマに取り付けるなんて、我社としてはできません。あまりに安っぽい代物でした。ドアパネルは既に気泡が浮いている状態で、安普請もいいところ。すべて綺麗に作り直しましたよ。サンダースはオリジナルとは異なる、ウォルナットの木材をダッシュボードに選びました。それは、ダッシュボードの制作で有名なチャップマン＆クリフ社の信頼できるものでした」

そして完成したローバーP5Bクーペ。車内に座って眺めてみると、細部へのこだわりに感心する。純粋主義者はダッシュボードがオリジナルでないと眉をひそめるかもしれないが、サンダースの趣味は悪くない。

エンジンを始動する。オリジナルはビュイック製となるコンパクトな3.5ℓV8エンジンはエレガントに目覚め、すぐに静かなアイドリングへ落ち着く。ATをドライブに入れて発進すると、聞き慣れたボロボロというエンジン音が聞こえてくる。小さなボールベアリングが金属製のパイプの中で回転しているような落ち着く音だ。

穏やかな乗り心地。ボディサイズの大きいローバーが、優雅に進んでいく。プアマンズ・ロールスロイスと評されたことも納得できる。「とても快適に運転できます。多くの人がローバーにまつわる思い出を持っています。わたしの妻の祖父も所有していたことがありましたし、キャタピラー社の子会社、パーキンス製のディーゼルエンジンを搭載したクルマも知っています」

「完成以来、このローバーP5Bクーペには日常的に乗っています。最近は北ウェールズの海岸にあるランディドノーの街まで行きました。わたしのもうひとつの趣味がリバプールのサッカークラブの観戦なんです。アンフィールド・サッカースタジアムまで応援にクルマで行った時は、素晴らしい歓迎を受けました」

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