初試乗 ポールスター1プロトタイプ 4気筒+ツインチャージャー+ツインモーター 608ps
公開 : 2019.07.10 10:10
意外なほどに運転が楽しい
標準のままでも、小さな起伏などはエアスプリングの共振を生むことなく、極めてスムーズにいなす能力さえ備えている。加えて驚かされるのが、ボディロールの少なさと車重を感じさせない巧妙なボディコントロール性。並外れた脚さばきだ。このまま量産されれば、EVやPHEVシステムを採用したクルマの中で、最も優れたドライバーズカーと呼べるだろう。
アダプティブ・ダンパーではなく、このオーリンズ製のダンパーを採用したという点は、いかにもポールスターらしいチョイスともいえる。少しマニアっぽくもあり、高価なアイテムだ。ステアリングの設定は変えられない。スピード域を問わず適度な重さがあり、安定性の高い中立付近から切り込んでいくに連れて、軽さが増していく。
これらのメカニズムのセットアップは、エンジニアの好みによって設定された印象が強い。リスナーのリクエストを受け付けない、洋楽ロック専門のFMラジオ番組的とでもいえようか。
クルマの仕上がりはあくまでも一般道にフォーカスが合わされている。リアタイヤに作用するトルクベクタリング機能は、穏やかにコーナリングしている時でも手助けをしてくれ、外側のタイヤに駆動力を欠けることで機敏性を高めている。
エンジニアによれば、トルクベクタリングの効きはほとんど観取できない、と話してはいたが、仮に機能していなければ、ドライバーはきっと気づくだろう。ここまでの車重を持ちながら、これほど俊敏な身のこなしをするクルマは、極めて限られている。すべてがハイレベルで統合されており、意外なほどに運転の楽しさを享受できるクルマだ。