ダイハツの「DNGA」 手放しに喜べないワケ 背景に「新興国」 独自の価値が必要
公開 : 2019.07.10 19:10 更新 : 2021.10.22 10:18
新興国の発展、日本企業にとって脅威に
軽自動車からコンパクトカーまで、新興国向けの商品を含めて同じベースを使って開発できれば、コスト低減が可能になる。そこはメリットだが、心配な点もある。
今後の発展次第では、日本のメーカーが、海外の新しいメーカーに商品力でも抜かれる可能性が生じていることだ。
前述のように新興国の所得が増えて、ユーザーが衝突安全性まで含めて商品力の高いクルマを求めれば、新しいメーカーも商品力を高める。日本メーカーも安泰ではない。
特に今は、日本からアジア地域への人材流出が指摘されている。自動車メーカーのある開発者は「日本の自動車メーカーから、各部門のスペシャリストを6人集めれば、立派なクルマを開発できます」という。
今の車両開発では、サプライヤー(下請メーカー)が大きな部分を担当している。従ってサプライヤーを使いこなせる有能な開発者が各部門のボスとして集まれば、車両開発が一気に現実的になるのだ。
今後は人材流出を避ける意味からも、意欲のあるひとは、会社に残って仕事を続けられる配慮が必要だろう。60歳を過ぎると、同じひとが働き続けるのに給与が半減するとか、失礼な仕打ちをしていると人材はどんどん海外へ流出していく。将来の競争相手に、有能な人材を提供しているのが今の状態だ。
そして日本のクルマにとって大切なのは、グローバル化しても、5ナンバーサイズに収まるようなコンパクトで上質な車種を進化させ続けることだろう。
過去を振り返ると、1970年代までの日本車は、低価格で燃費も優れ、故障しない実用車として世界に普及した。このイメージが強いために、日本メーカーは海外では高価格車を売りにくく、トヨタはレクサス、日産はインフィニティ、ホンダはアキュラというプレミアムブランドを設けた。
しかし今後は、日本車全体を上質な方向に発展させないと、個性や優位性を失ってしまう。
そこで威力を発揮するのが、軽自動車のノウハウだ。日本のユーザーがダイハツ・タントやホンダN-BOXを見た時に感じる「これは凄い!」「これで十分!」というサプライズを、いかに小型車造りに反映させられるのか。
DNGAの価値も、今後の「日本車であること」を生かした商品開発によって決まる。
果たしてDNGAは、具体的な商品開発で真価を発揮できるのか!? 商品力でトヨタのTNGAを抜いて欲しい。