ディエップ産のダイヤモンド アルピーヌ・ルノー3台比較試乗 A110/A310/GTA
公開 : 2019.07.21 07:50 更新 : 2021.05.13 12:00
夢中になれるA310
ただ、これだけ魅力的なクルマであっても、筆者は、A110で長距離を走りたいとまで思うかどうかには自信がない。しっかりとした乗り心地とぶっきらぼうなサウンドトラックは、おそらく少量ずつ摂取するのが最適であり、筆者は、あらゆる道をどうしてもラリーステージのように扱いたくなってしまい、反則点が増える危険性が高いと思う。そんなわけで、次はA310に試乗する。
A310は、GTAほど洗練されておらず、A110ほど荒削りでもなく、筆者の印象では、その両者の要素の完璧な妥協点を見出している。A310は、さらに小柄な姉妹車であるA110よりも後に配分されている車量が大きいため、ハンドリングでは、さらにリアが振られるものの、ステアリングは素晴らしく、性能は爽快さに溢れる。
PRV V6エンジンは決して世界で最もうるさいエンジンではないものの、その運転経験は、全体として、最高度に中毒性がある。A310は、見かけ以上に速い。実際のところ、許せないほど速く、しかも、素晴らしく優雅だ。スポンジの効いたシートは、GTAのものよりもはるかに柔らかく、また、狭く、何とも70年代らしいキャビンも魅力的だ。
また、奇妙なクラップ・ハンズ・ワイパーからフロアヒンジ式のペダル、そして好き嫌いが分かれるスタイリングにいたるまで、素晴らしい個性に溢れている。これは、あらゆる小型スーパーカーの手本だ。
遠い昔の1979年のことだが、筆者は、数週間分の小遣いをはたいてオブザーバー社の「自動車名鑑」を買った。その本で、初めてA310の存在を知り、当時6歳だった筆者の目はそのクルマにくぎ付けになった。今、その実物を運転していても、筆者は、やはり、この最高に謎めいたスポーツカーにどうしても夢中になってしまう。このクルマについて知る者は、ドーバー海峡のこちら側にはあまりいないものの、そんなことを気にする必要はない。A310は、本当に素晴らしいマシンだ。