V型12気筒エンジン、なぜ魅力的なのか 近づく惜別のとき 理由を探る

公開 : 2019.07.20 18:50  更新 : 2019.07.20 19:11

理由はシンプル 12本のシリンダー

だが、例えS65のようなラグジュアリーサルーンであっても、V12にはもうひとつの顔がある。どう考えても、このメルセデスに積まれたV12は、数年前にはお払い箱になって然るべきだった。単に1990年代にまで遡ることのできるその基本設計が古いというだけでなく、メルセデスにはこの排気量にはるかに相応しい別のユニットが存在しているからだ。

S63が積む4.0ℓV8であれば、この古の6.0ℓV12にパワーでは若干劣るものの(それでも、GT 63 4ドアクーペが積むV8はよりパワフルなエンジンだ)、燃費性能に優れ、新型9速オートマティックとの組み合わせも可能だ。一方、S65の場合、その強大なトルクに対応できるメルセデス唯一のトランスミッションは、こちらも設計年次の古い7速オートマティックだけとなる。

メルセデスでは、S65のほうがわずかながらも速さで勝るとしているが、V12は重く、S63のほうがパワー・トゥ・ウェイトでも、トルク・トゥ・ウェイトでも勝っているのだから、それが真実だとは思えない。

さらに、アッファルターバッハにあるメルセデス-AMGの拠点を訪れたとき、がっちりとした体つきの男たちが、トロリーに載った太古のV12ユニットを引っ張っている様子を目にしたので、なぜいまだにAMGでは、こんな面倒な作業を続けているのかと質問してみたことがあった。

その答えは非常にシンプルで、このエンジンを求めるひとびとがいるからだというものだった。そうしたひとびとは、性能やパワーなどに興味はなく。彼らが気にしているのは、V12という称号であり、求めるのは12本のシリンダーなのだ。

その理由は分からないでもない。明らかにステータスの問題であり、正直に言えば、わたしにはまったく関心のないことだが、それでも、V12のパワーデリバリーにはそれだけの魅力がある。

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