ポルシェ/アストン/ジャガー チーフエンジニア鼎談 スポーツカーの未来は安泰
公開 : 2019.07.20 11:50
完璧主義者? 若手エンジニアについて
――みなさんはクルマ好きであれば世界最高だと考える職業についていますが、どうやって自分の役目が終わったことが分かるのでしょう? どの時点でクルマが仕上がったと言えるのですか?
マイク・クロス(以下、クロス):問題は、実際には決して終わりがないということです。
アンドレアス・プロイニンガー(以下、プロイニンガー):そうです。決して終わりはありません(笑)
クロス:単に、これ以上やってもそれほど効果が得られず、量産の準備が整ったと思えるポイントがあるに過ぎません。これまでに、完ぺきに納得したことがあったかどうか、わたし自身定かではありませんが、自分で設定したターゲットに到達したことは分かるものです。
――周りから完璧主義者と呼ばれる?
クロス:確かに。まわりはイライラしていることでしょう。
マット・ベッカー(以下、ベッカー):違う呼び方をしているのかも知れません。
――本物のドライバーズカーの基準を、チームと共有している?
ベッカー:チームのメンバーとは共通認識を持っていますが、それは、彼らが何を「良い」と思うかを基準に厳選されたメンバーだからです。「良い」というのは、やや主観的な評価でもありますが、すべてをひとりで行うことは不可能なので、同じ感覚を持ったチームが必要なのです。
プロイニンガー:そのことは、いまもシャシーエンジニアリングにおける真実であり続けています。クルマに乗って感じたことを信じるしかありません。そして、それこそがわれわれが創り出そうとしているものであり、見事なチューニングなのです。ドライバーの皆さんにはクルマの挙動を感じて欲しいのであり、そのために電子デバイスが役立つようにしたいと考えています。難しい課題ですが、重要なことです。単なる体験テストやコンピューター、シミュレーションといったものでは不十分なのです。
――自分たちの若いころと比べた、いまの若手エンジニアの優れている点と改善すべき点は?
クロス:わたしの若いころに比べ、彼らははるかに豊富な知識を持っていますが、それが実践的なものかどうかは分かりません。もっとクルマを愛し、メカニカル面への興味を持って欲しいと思っていますし、そのための適性も必要でしょう。
プロイニンガー:わたしもまったく同感です。いまのところは、体にガソリンが流れているような本物のクルマ好きのエンジニアたち多くいて、前へと進むことが出来ています。仕事に全霊を傾け、創造性を発揮して、24時間ほんとうに素晴らしいクルマ創りを考えているようなひとびとです。いまの若い世代には、もう少し本気で取り組むとともに、実践的な考え方を身に付けて欲しいと思っています。