ポルシェ/アストン/ジャガー チーフエンジニア鼎談 スポーツカーの未来は安泰
公開 : 2019.07.20 11:50
もしやり直すなら? 電動化の影響
――20年先の後任は決めている?
プロイニンガー:はい。
ベッカー:まだです。
クロス:分かりません。
――もしやり直すとしても、同じキャリアを選択する?
ベッカー:はい。
クロスの言う通り、つねに新しい学びがあり、ソフトウェアと若い才能を活かして、ひとびとがクルマに求めるフィールを実現するというのは、素晴らしい喜びです。
クロス:つねに新しいモデルであり、決まりきったやり方は通用しません。つねに学ぶべきことが多くあります。
プロイニンガー:間違いなく同じキャリアを歩みます。何度もスポーツカーは死んだと言われましたが、つねに技術によって道を切り拓いてきたのです。次の20年は、これまでの20年よりも刺激的なものになるでしょう。
――ドライバーアシストはスポーツカーに有益?
ベッカー:ドライバーアシストによって自動車の魅力を高めることが可能であり、実際にそうしています。アストンの場合、スイッチをオフにすることで、介入を無くすことができます。完全に動作を停止するのです。スタビリティコントロールとトラクションコントロールは大きく進化し、非常にクレバーなシステムとなっていますから、いまでは車両に起こることを事前に予測することすら可能です。つまり、正しいセッティングを行うことで、ドライビングの楽しみを阻害しないようにすることは可能であり、それこそがわれわれの役目なのです。
プロイニンガー:こうしたシステムに関する大きなテーマは、つねに「何を達成しようとしているのか?」ということです。スポーツカーにおけるトルクベクタリングは非常に有益です。週末サーキットに自分のクルマを持ち込むひとびとの目的はラップタイムであり、実感できるだけの効果があるということです。
クロス:同時に、車両の基本性能を正しい方向に導くことも重要です。そうすれば、ドライバーアシストは、その車両の持つ性能をさらに向上させることができるのです。低速でも高速でもドライバーとの繋がりが求められています。
――電気モーターで、いまのポルシェとジャガー、アストンのエンジンと同じキャラクターの再現は可能?
クロス:無理です。だからこそ、デザインやハンドリング性能、快適性、洗練といった、伝統的な特徴が、クルマのキャラクターを決めるより重要な要素になると考えています。電気モーターでは内燃機関ほどの違いをもたらすことはできないのです。
プロイニンガー:それでも、内燃機関がなくなるその日まで、ともかくスポーツカーにエンジンを搭載し続けることは可能であり、そのころには、3人ともとっくに引退しているでしょう。つまり、次の世代の問題です。内燃機関にはまだまだ時間が残されていると信じています。もちろん、電動化は正しい道であり、その時代を見据える必要はありますが、だからと言って、それがひとびとが見向きもしないようなスポーツカーを創り出すことを意味するわけではないのです。