ポルシェ/アストン/ジャガー チーフエンジニア鼎談 スポーツカーの未来は安泰
公開 : 2019.07.20 11:50
SUVの功罪 最高のドライバー
――すべてのスポーツカーブランドがSUVを手掛けることは問題?
クロス:つまるところ、われわれが行っているのはビジネスであり、成功が義務付けられています。そして、そのための方法が、ひとびとが求めるクルマを創り出すことなのです。
プロイニンガー:矛盾は感じません。自分自身クルマ好きですが、まったく問題ではないと思います。自宅へスポーツカーに乗って帰るという幸運な状況もありますが、大抵運転するのは所有しているカイエンです。荷物を持って出掛けたりしなければならないからですが、ドライビングも楽しむことができるのです。
ベッカー:いま、DBXの最終開発段階に差し掛かっています。その幅広い能力は信じられないほどです。アウトバーンでは快適に300km/hのクルージングが可能であり、ニュルブルクリンクでは信じられないようなラップタイムを記録することができます。さらに、原野を走行することもでき、5人の乗員と荷物を搭載するとともに、ときにはボートを牽引することまで可能です。その動力性能は驚異的ですらあります。一方で、ひとびとはブランドというものも求めています。そして、こうしたモデルを創り出すべきだったかどうか気にするのは、われわれでもなければ、お客様でもありません。それは外野のひとびとなのです。
――これまで同乗したなかで最高のドライバーは?
ベッカー:ダレン・ターナーは実に見事な腕前を披露してくれます。彼のコーナーリングスピードとそのスムースさは、じつに印象的です。
プロイニンガー:わたしにとってはワルター・ロールです。彼のクルマをコントロールするテクニックは信じられないほどであり、ステアリング操作はごく僅かですが、それが非常に重要な意味を持っています。さらに、驚くほど速いドライバーでもあります。彼との同乗試乗を終えると、いつも同じことを考えるのです。つまり、「あれほどのグリップをどこから得たんだろうか?」ということです。そして、それはいまも変わりません。
クロス:数年前、ジョン・ワトソンが運転するジャガーでここを走ったことがありますが、素晴らしいドライバーです。非常にスムースで、サーキットのすべてを上手く使って、驚くほど速く、効率的な走りを見せてくれました。スティグ・ブロンクビストの横にも乗ったことがありますが、本当に特別な瞬間でした。
――大きな事故に遭遇したことは?
ベッカー:仕事ではありませんでしたが、ドライビングの練習をしていた時のことです。残念ながら、ロータスを離れるときに、「ベイビー・ベッカー・ベンド」として知られるようになったコーナーがあります。父が所有するヴォクゾール・カールトンのエステートでそのコーナーを通過しているときに、ドリフト状態に持ち込もうとしました。そうできると思ったからですが、上手くはいきませんでした。道の反対側にある壁に激突したことが知られてしまいました。当時17歳でした。それ以来、大きな事故はありませんが、さまざまな経験を与えてくれるクルマたちは金額では表せない貴重な存在であり、大切にしなければなりません。