ヒストリック・ラリー「シルブレッタ・クラシック」へ挑戦 W113 メルセデス・ベンツ230SL
公開 : 2019.07.27 07:50 更新 : 2020.12.08 10:40
1963年「マラソン・デ・ラ・ルート」230SLラリーを復刻
ベーリンガーが1963年のマラソン・デ・ラ・ルートで優勝し、試乗初めてマラソンで2年連続優勝を果たしたドライバーとなる。同時にメルセデス・ベンツW113型SLにとって、ラリーの記録としてのハイライトにもなった。その翌年、1964年にもマラソンに出場しているが、ディーター・グレムザーとマーティン・ブラウンガルトのペアによる19号車は電気系統のトラブルでリタイア。ベーリンガーとカイザーのペアは3位でのフィニッシュとなっている。
短くも輝かしい記録を残したW113型SLラリーの「リトルン」だが、その後開発部門に戻され、最終的にスクラップにしてしまった。しかしこの判断は過ちだったとメルセデス・ベンツは気付き、ミレニアムを迎えるタイミングで忠実な復刻版を製作した。ベーリンガーの記憶による助けを借りて。
ベーリンガーは、パワーステアリングは軽い設定を指定し、ファイナルレシオは低めに設定した。220SEbの4速マニュアルの1速目は高めのレシオにしてあった。SOHCの直列6気筒エンジンはフュエルインジェクションで燃料が供給され、標準の230SLより20psほど高い最高出力の171psを発生させていた。生産モデルの280SLと同レベルの最高出力だった。またバケットシートも当時のものが再現されており、当時の出場者にも羨ましがられたであろう、スウェーデン・ハルダ社のトリップ・メーター「ツインマスター」とラリー用コンピューターの原型「スピードパイロット」が搭載されている。
この230SLラリーにもパワーステアリングが付いていると知ると、少し気休めにはなる。パワステが付いていないクルマをラリーでドライブするのはかなり厳しいはず。だがステアリングフィールは軽すぎ、ほとんどフィードバックもない。シャシー性能には優れ、スポーツカーに期待する通りグリップ力も高く安定している。ブレーキも良く効く。
2308ccのストレート6のサウンドも素晴らしいが、2本出しのマフラーから溢れるエグゾーストノートが支配的にオーバーラップ。2000rpm以下ではレスポンスは穏やかで、アクセルペダルと機械式インジェクションとの関係性は薄いらしい。3000rpmを超えたあたりからエグゾーストノートのボリュームが大きくなり、前に出てくる。トロンボーンのようだ。
そこからさらにアクセルを踏み込んでいくと、4000rpm位まではエグゾーストノートの響きはクレッシェンドしていく。そこかららにレッドゾーン手前1000rpmを切るあたりで、ビブラートとディストーションが混ざってくる。快音を楽しみながらスタートラインにつくと、フルシンクロ4速マニュアルには問題を抱えていることに気付いた。3速と4速とのレシオギャップがかなり大きいのだ。