ヒストリック・ラリー「シルブレッタ・クラシック」へ挑戦 W113 メルセデス・ベンツ230SL

公開 : 2019.07.27 07:50  更新 : 2020.12.08 10:40

迫るリヒテンシュタインとスイスとの国境

金曜日は370kmのステージ。今日はドライバーとコ・ドライバーを入れ替える。数学が苦手で、方向音痴な僕が助手席に座ってナビゲーションをする番だ。トップのクルマは朝の7:31にスタートしている。そこから僕らの到着予定時間を計算して、タイムシートに記入する。ブツブツと計算のややこしさに不満を漏らしてしまう。たとえ時間計算が間違っていても、会計士の仕事をするつもりはないから大丈夫。

初めの51kmはパルテネンからゲフィまでを走る。ありがたいことに僕の乗り物酔いのクセは顔を見せない。コ・ドライバーの仕事は続けられそうだ。「あと1.75kmでフェルトキルヒを通過」という標識を過ぎる。リヒテンシュタインがすぐ先だ。ハルダ製のトリップメーターが0を指す。「あと300mでシャッテンブルグ城」 と告げ、トリップメーターをまた0にする。「300mでTジロに突き当たるから、ブレゲンツとドルンビルン方向へ右折」 ラリー用コンピューターが役に立つ。

リヒテンシュタインとスイスとの国境はすぐ先にある。コーエンのドライブは上手だと思う。スペシャルステージでも僕より速くスムーズで、落ち着いている。時々文句を口にするが、シンクロしたマニュアル・ミッションと真剣に対峙するように運転する。

ちなみに、オリジナルのスペックの通り準備された230SLラリーは、当時の通りホイールサイズはふたつが選べる。重心高が下がり加速が向上する直径の小さな13インチと、今回選択した、最低地上高を高く確保できる15インチ。山道に備えてボディにはアンダーガードが付け加えられ、ボディシェルの剛性も高めてある。

ランチタイムのあと、再び僕がドライバーズシートへと座る。90kmほどの九十九折の道のステージだ。アルブラ、リヴィーニョ、セスベンナの山々を巡り、スイス・シュクオルの町を目指す。アルプスの険しい峰々に沿うように走る僕らは、サメの尖った牙に挟まった食べかすのよう。しばらくしてダボスとサンモリッツの標識を過ぎ、アルブラ峠を越えてエンガディン地方へ入った。マドゥラインとツオウの町の美しい通りを進む。中世の時代から残る木製の躯体が露出した建物が並び、映画のセットの中にいるようだ。

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