ヒストリック・ラリー「シルブレッタ・クラシック」へ挑戦 W113 メルセデス・ベンツ230SL

公開 : 2019.07.27 07:50  更新 : 2020.12.08 10:40

先行する1955年式300SLガルウイング

同じメルセデス・ベンツから出場している1955年式の300SLガルウイングに乗るマグナス・ウォーカーとハンナ・エリオットとはよく顔を合わせる。バンパーのない真っ黒なレースマシンが、SLのルームミラーに突然姿を表わす。そして笑顔で追い越し、爆音を残して走り去っていく。上り坂が続く区間では、W113はパワフルなガルウイングと互角に走り合うことは難しい。

雨がひどくなってくる。トンネルがシェルターのように雨水をしのいでくれる。制限時間が気になるが、雨で濡れた道は危険性を増し、ペースを上げることも難しい。直線区間ではパゴダの車内には大きなミツバチの羽音のような唸り声が響く。急に迫ってくる急カーブの度に、ブレーキを派手にけとばす。

ハードブレーキングでSLのノーズは沈み、荷重が軽くなったリアタイヤは外に膨らむ。挙動はありがたいことに漸進的で掴みやすい。制限時間オーバーで被る数分のペナルティを避けるためにも、ペースを速めることにする。

次の94kmの区間はシュクオルとカップルを走り、オーストリアへと戻る。あまりに長時間座っているものだから、ドライバーズシートのクッション性は殆ど感じなくなってしまった。骨盤が座面にボルトで固定されてしまったかのように重たい。ワイパーの刻む気怠いリズムが、眠気を誘う。しかし、どこからか冷たい水が私の左足に滴り、その度に目が覚める。すでにかなりの距離を走っているが、マラソンのゴールはまだ先だ。ガシュルンのザンクト・ガレンキルヒに用意された、本日最後のチェックポイントまでは50kmほど。

ジルヴレッタ・ホッハルペンに入ると急なヘアピンが続き、斜面には突如として雲が現れて、視界が奪われる。雲から抜けるまで視界は30mもなくなってしまう。ガシュルンが近づくと沢山の人が出迎えてくれて踊りた。悪天候で見通しも悪く、観衆は落胆したに違いないが、今晩過ごす町での想像以上に大々的な歓迎に包まれる。

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