ヒストリック・ラリー「シルブレッタ・クラシック」へ挑戦 W113 メルセデス・ベンツ230SL

公開 : 2019.07.27 07:50  更新 : 2020.12.08 10:40

寛大な気持ちがなければ辛いほどにハード

土曜日。太陽が戻ってきた。そしてストップウォッチとルートブックも僕に戻ってきた。今日は北西へ進路を取り、パーテネンとブルーデンツを巡って、ゾンタークへと向かう。ダーミュルスでランチを取り、オー、レッヒ、ツァー、フレクセンパスとオーストリア西部に伸びるルートは、美しい景色と素晴らしい道路、天気にも恵まれ、今回のマラソンでも最も記憶に残る区間になった。

オーストリアのアルプスの斜面に続くワインディング。シュレッケンの渓谷を横目に走り、ステルヴィオ峠もとても印象深い景色だった。レッヒからツュルスへの区間では、息を呑むほど美しい橋を渡り、岩石が露出した丘陵地帯に掘られた片側が開いたトンネルをくぐる。あまりの美しさで郷愁に浸ろうとするが、ヴェンドリンガーの190SLレンスポルトとマグナス・ウォーカーの300SLガルウイングのノイズで現実に引き戻される。

「シルブレッタ・クラシック・ラリー・モンタフォン」最後のランチをともにして、マグナスに今回のイベントの印象を聞いた。「ガルウィングはとても個性豊かで、まるで生き物のようです。全高が低いので自分の身長を心配していましたが、運転もしやすくフレンドリーなクルマですね。むしろ快適だったといってもいいでしょう。車内は暑いと聞いていましたが、そんなこともなく、日常的に使う姿を目にするのも理解できます」 と答えがかえってきた。

「トランスミッションのタッチもいいですし、サウンドも素晴らしい。想像以上に走るのが楽しくて、運転に夢中になってしまいます。1日中走っていてもまだ運転したいと思いましたし、明日もまた運転するのが楽しみに感じるほど。ハンナにっても、素晴らしい体験になりました」

食事が終わると、W113型230SLラリーの運転席に戻った。午後は全開走行区間がひとつと、スペシャルステージがいくつか用意されている。土曜日だから沿道には大勢の見物客が押し寄せるだろう。そして順調に進めば、オーストリアのシュルンスでチェッカーフラッグを受けることになる。

さて、僕たちは何位でフィニッシュできたかって? 実はよくわかっていない。途中のスペシャルステージで確認したときは一番ビリを走っていたようで、173位だった。だけれど、誕生から55年目を迎えたパゴダにとって、いい訳がましいが、順位は大した意味を持たないと思う。

ベーリンガーが1963年のマラソン・デ・ラ・ルートで優勝した偉業を改めて讃え、ガッツあるSLの素晴らしさを再認識できただけで充分だ。当時はいま以上に、寛大な気持ちがなければギブアップしてしまうほど、相当ハードなラリーだったに違いない。

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事