長期テスト アウディTT RS(最終回) 日常で光る魅力
公開 : 2019.07.31 20:25
独特の5気筒エンジン あまりにも安定志向
そしてこの隙のないモデルに搭載されるのは滑らかな直列5気筒エンジンだ。
まず、400psの2.5ℓエンジンと7速Sトロニックの組み合わせは何より扱いやすく、過激な運動性能にも寄与している。扱いやすさと洗練性によって、他の部分へと注目を移している一方で、走りはまずまずのクーペを、残りのTTラインナップにはない暴力性を秘めた、非常に速いマシンへと生まれ変わらせている。
つまり、このクルマは究極のアウディらしさを体現している。明快で、凝縮された、現代的なクルマだ。
意外な問題点は、RSが真に忘れられないスポーツカーとして作り上げられてはいない点だ。RSとはまれにしか、ただただドライブしに行きたくなるようなことがないのだ。これは、週に一度は連れ出したくなるポルシェ・ケイマンやロータス・エクシージ、アルピーヌA110とは大違いだ。
理由はよくわかっている。高速域でも盤石で、わかりやすさを求めた結果、アウディスポーツは元から安定志向だった性質を、公道では事実上破綻を見つけることができないほどにまで高めているのだ。そうして途方もないグリップ、ロールのなさ、鈍いターンインを手に入れた一方で、ライバルのように、ドライバーにニュアンスやフィードバックを伝えることはない。