VWビートルは終売 なぜフィアット500/ミニは生き残れている? 背景に存在価値

公開 : 2019.07.22 19:10  更新 : 2021.10.22 10:18

なぜミニ/フィアット500は生き残った?

ザ・ビートルと同様、往年の長寿モデルに外観を似せたクルマとして、現在のミニやフィアット500がある。これらが生き残っている理由はなぜだろう。

初代ミニは1959年に発売された。全長が4m少々の小さなボディだが、エンジンを横置きに搭載して前輪を駆動する方法により、空間効率を高めた。小さなボディに、大人4名が乗車できる居住空間を備える。

今ではエンジンを横置きに搭載する前輪駆動車は小型車の定番だが、当時は珍しく、そのメリットをストレートに表現したのがミニだった。

2001年、BMWがミニの権利を取得して、今日のプラットフォームで新しいミニを開発した。フルモデルチェンジを繰り返しながら現在に至っている。

BMWミニが生き残った理由の筆頭は、丸型ヘッドランプを装着した愛敬のあるフロントマスク、水平基調のボディスタイルというクラシックミニの特徴を受け継ぎながら、バリエーションを増やしてミニをブランドに育て上げたことだ。

ニュービートルやザ・ビートルは、あくまでもフォルクスワーゲンの1車種に過ぎなかったが、ミニは独立した位置付けになり、派生車種を充実させている。2001年当時のBMWは、後輪駆動車のメーカーだったから、前輪駆動のBMWミニが独立する必然性もあった。

またクラシックミニもエンジンを横向きに搭載する前輪駆動車だから、BMWミニでも基本的な配置は変わらない。ニュービートルやザ・ビートルのような駆動方式が逆転する場合に比べると、デザインに無理がなく、バランスの良い造形に仕上がった。

そのためにクラブマンやクロスオーバーといったサイズの大きな車種も開発され、ミニのブランドが構成されている。これが生き残りの秘訣だ。

フィアット500も往年のモデルをベースにしている。モチーフになった1957年発売のフィアット500は1975年に生産を終えたが、2007年に新型が「フィアット500生誕50周年」を記念して発売されている。

この新しいフィアット500が10年以上生産を続けている理由は2つある。

まず欧州車の中ではボディが特に小さいことだ。全長が3570mm、全幅が1625mmというサイズは、パッソなどを下まわって取りまわし性が優れている。

2つ目の理由は往年のフィアット500がエンジンを後部に搭載する後輪駆動、現行型は一般的な前輪駆動なのに、外観を可愛らしくバランスの良い造形に仕上げたことだ。

SUVのフィアット500Xはボディが大きいが、外観はフィアット500に似ている。独特の雰囲気があり、コンパクトなフィアット500のデザインが、多用途性を持つことも物語る。

ミニにも当てはまることだが、いろいろなサイズの車種に適用できるデザインテーマには普遍性があり、それが生き残っている一番の理由といえるだろう。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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