新生アルピーヌA110開発エンジニアが来日 語る、誕生までの裏話 後編
公開 : 2019.07.28 11:50 更新 : 2021.05.13 12:00
今後はA110派生モデルが出る?
このインタビューと前後して、ハイパフォーマンス版となるA110Sが発表された。
すでにアルピーヌ・カーズ自体がA110の新たなる派生モデルを徐々に加えていくことはアナウンスしていたものの、どのようなバージョンを考えているのか。
そして腐食や錆に強いアルミニウムボディやパーツを多用しているのは、将来的にヒストリックカーになった時にも、価値を持続させるための選択だったのだろうか?
「何とお答えしたらよいものか。わたしたちはポルシェをリスペクトしているからこそ、911でいうカレラ、カレラSにGTSといったラインナップのロジックを真似ることはしません」
「派生モデルについては『A110のライフサイクルの中で顧客が本当に求めるものを考え、対応していく』という風にしかいえないですね(笑)」
「顧客はつねに異なるモデルを求めるものですし、旧アルピーヌの時代にも1967年に、翌年のグルノーブル冬季五輪を記念したオリンピック・バージョンがありました(注:A610の1992年アルベールヴィル五輪版も存在した)」
「ただ、はっきりしていることは、ありとあらゆる派生モデルを作る訳ではありません」
「『ヒストリックカーになった時のためにアルミニウムを採用したか?』という点については、コンストラクターとしてはノーです」
「数々のフェラーリやコルベット、フォードTもそうですが、クルマそのものが年数を経ても所有したい/乗りたいと思われる1台であるかどうか、それは造り手が計算してすべてコントロールできることではないのです」
「そこにはやはり、わたし自身のリファレンスというか基準ですが、一種のマジックな側面が必要だと思っていますから」
慎み深いドースのコメントだけに深読みになるが、新しいA110には彼のマジックが込められている。そう考える方が妥当だし、ステアリングを握ってそのマジックにかかってしまったならば、新しいA110は代わりの効かない1台となる。