新旧ベントレー比較試乗 EXP2 vs ベンテイガ 伝統はいまも変わらず
公開 : 2019.08.04 11:50
ベントレーの異端児 驚きの偉業
そして、こうした哲学はEXP2でも明らかだ。ビードエッジタイヤを履いて、ブレーキを持たないフロント、センター配置のアクセルペダルとシンクロ無しのギアボックスなど、多くの点で、非常にシンプルなモデルでありながら、このクルマの3.0ℓ4気筒エンジンは優れた始動性を見せ、直ぐに安定したアイドリングへと落ち着くのであり、ガソリンタンクが空になるまで、喜んで走り廻りたいと思わせる。
だが、実際には、ガソリンタンクが空になるまでというのは不可能だ。なぜなら、数分毎にドライバーは燃料タンクからエンジンへとマニュアルでガソリンをポンプアップする必要があるからだ。
それでも、このクルマの運転は素晴らしい体験であり、76psをはるかに超えるパワーを備えているのではないかとも思ったが、フル装備のケーターハムと同じくらいのわずか658kgしかない車重によって、想像よりもはるかに見事な走りを見せる。
現代の他のクルマと同じペースで移動することも十分可能であり、現在の基準で考えれば、129km/hという最高速は非常に控え目なように感じるが、これは1919年当時の平均的なクルマの2倍以上もの速度であり、まさに当時のブガッティ・シロンとでも呼ぶべき存在だった。
だからこそ、ベンテイガの堂々とした体躯に驚かされ、何が起こったんだろうという気持ちになるのも分かる。だが、実際に多くの点でベントレーのルールから逸脱しているのは、ベンテイガではなくEXP2のほうだ。
このクルマはテスト用のプロトタイプとして作り出されたのであり、そのため、その超軽量ボディは美しくはあるものの、壊れやすく、実用性に欠けた作りとなっている。
1920年代、ベントレーが本格的にクルマ作り始めると、そのモデルはどんどん大きく、重くなっていった。3ℓエンジン導入の4年後には、すでにその排気量は6.5ℓにまで拡大しており、最終的には8.0ℓにまで達したそのエンジンは、コーチワークによって作り出された巨大なリムジンに搭載されていた。
WOベントレーは、こうした1台のステアリングを握って、ディエップからフランス南部まで、日中だけで走る切ることが出来たと言うが、当時、高速走行に相応しいクルマなど、他に存在していなかったことを考えればまさに偉業だった。
そして、まさにWOベントレーの偉業と同じ理由から、ベンテイガに乗ってのこの旅も興味深いものとなった。