新旧ベントレー比較試乗 EXP2 vs ベンテイガ 伝統はいまも変わらず
公開 : 2019.08.04 11:50
良いクルマ、速いクルマ クラス最高の1台
多用途性というのもWOベントレーが自らのモデルに求めた資質であり、オーナーが望むすべてに応える能力というのは、まさに現代のベンテイガも実現しているものだ。フランス南部まであっという間に移動したり、川を遡上することもできる(実際にやってみたことがある)。
これほどの車高と重量を持つモデルでありながら、コーナーでも見事な能力を発揮するが、かつてのベントレーは決してそうではなかった。当時、真のスポーツカーが欲しければ、選ぶべきはアストン マーティンやアルファ・ロメオ、ブガッティといったブランドだったのだ。
EXP2をこれほど自由に扱うことが出来たことは、単なる名誉や大いなる喜び以上のものがあったが、興味深いエクササイズでもあった。
スピードを出したり、ギアシフトのタイミングをはかったり、燃料のポンピングやブレーキに苦戦し、ペダルレイアウトに注意しながらも、すべての操作に直ちに印象深い反応を感じることができたのは、わたしのような人間にとって、これ以上の経験など無いと思えるほどのものだった。
WOベントレーが目指した品質やスポーティさといったものが感じられる一方で、このクルマが単なるプロトタイプでしかなかったことを忘れる訳にはいかない。彼のビジョンを証明するための第一歩であり、そのための方法であったEXP2が存在したからこそ、10年後、ベントレーの芸術性とエンジニアリングの閃きを示す最高のモデルとして、あの巨大な8リットルが誕生しているのだ。
そして、ベンテイガの持つパワーと重量、品質や多用途性といったこうした価値観は、現代のベントレーにも連綿と引き継がれている。
WOベントレーであれば、どんなベンテイガを創り出したかは知る由もないが、もし彼がこのクルマを運転したなら、単に驚くだけでなく、自身の名がいまも残されていることを誇りに思うとともに、100年の歳月が経過しても、ベントレーのモデルが「良いクルマ、速いクルマ、そしてクラス最高の1台」であることに満足するに違いない。