ロードテスト ジャガーFペースSVR ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.08.03 11:50 更新 : 2019.08.09 16:51
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
たとえ真のパフォーマンスカーらしく姿を変えたSUVがめったにないとしても、ジャガーFペースはそのレアケースに当てはまる。このクルマは、セダンモデルのXFとプラットフォームを共有していることを忘れてはいけない。さらには、標準モデルがすでにもっともハンサムなSUVのひとつであり、そのSVR仕様がとりわけ際立ったものになったとしても不思議はない。
しかし興味深いのは、ジャガー・ランドローバー内部のチューニング・スペシャリストが手がけたSVRモデルの第3弾にして最新作が、ライバルたちと違ってパフォーマンスを声高に訴えていないことだ。標準で21インチ、テスト車に装着されたオプション品は22インチという大径ホイールや、軽量アクティブエキゾーストシステムの4本出しテールパイプ、エアロパーツや冷却性をアップするボディワークなどを備えるものの、FペースSVRのルックスは標準モデルと大きく変わらない。メルセデスAMGの抜け目ないGLC63や、ステルヴィオ・クアドリフォリオの横に並んだら、控えめなクルマだといわれそうだ。並外れてグッドルッキングで、適度に目的に叶っているが、ライバルたちほど風変わりなところはない。
そうはいっても、FペースSVRのエンジンには、控えめなところなどない。レンジローバー・スポーツやジャガーFタイプのSVR仕様と同じく5.0ℓV8スーパーチャージャーだが、ややチューニングは異なる。以前の2台は575psと71.3kg-mを発生したが、今回は最高出力が6000~6500rpmで550ps、最大トルクが2500~5500rpmで69.4kg-mだ。トランスミッションは8速ATで、駆動方式はもちろん4WDだ。
最高出力は510psのステルヴィオ・クアドリフォリオとGLC63Sクーペを上回るが、2070kgの車両重量はそれら2台をわずかながら上回る。そのウェイトペナルティが、直線加速にいかなる影響を及ぼすかは、追って検証しよう。
スプリングはフロントが30%、リアが10%ハードにされ、ボディコントロールの向上が図られた。新採用された電子制御アクティブディファレンシャルとブレーキを用いたトルクベクタリングシステムは、コーナリング時のトラクションを最大化する。拡大されたブレーキは、速さに見合った制動力を生み、SVR専用ソフトウェアはアダプティブサスペンションやEPAS、ダイナミックモードを司る。
連続制御式パートタイム4WDはリア寄りの駆動力配分で、ローグリップ時には最大90%をフロントに配分する。いっぽう、アダプティブダンパーは、日常使いにおける適切な快適性をもたらしてくれるに違いない。