クルマ好きなら1度は味わいたい ポルシェ718ボクスター・スパイダー 試乗
公開 : 2019.08.03 10:10 更新 : 2019.08.03 11:53
人生を豊かにさえしてくれるドライビング
結論からいうと、ポルシェ718ケイマンGT4も良かったが、ポルシェ水準で判断しても、ボクスター・スパイダーはすこぶる良い。ケイマンGT4ほど気張ることなく、プレッシャーを感じずにシャシーやエンジンの実力を味わうことができる。ルーフを開いても、やや許容値は低くなるが95%はポテンシャルが保たれる。レッドゾーンとなる8000rpmを目がけなければ、比較的ロングギアの設定にも苛つくことはないだろう。
クルマとして基本的な部分の仕上がりが極めて高く、前頭葉に恐怖を覚えさせることなく、人生を謳歌するような素晴らしいドライビングを味わえるはず。ステアリングは見かけほど重くなく、ギア比も過度過ぎず、フィードバックも良い。驚くほど直感的な操舵感だ。電動パワーステアリングの基準の中で、ベンチマークに位置づけられる。
手のひらには路面状態の余計な情報はフィルタリングされた、充分な感覚が伝わってくる。リニアでナチュラルな重み付けも際立っている。ゆっくりとコーナーを抜けていくという動作だけでも、思わず笑顔になってしまう操作感がある。そしてこのステアリングフィールがあってこそ、スパイダーのハンドリングの秀逸さにも気づくことができるのだ。
クルマの挙動は常にニュートラル。安定性を崩すことも不可能ではないが、多くのオーナーにとって、一般道では到達させることが難しいであろう、相当なスピードか操作が必要となる。ブレーキペダルのフィーリングも制動力の高まりも、同様に優秀。アンダーステアに陥るのは無茶な運転をしたときくらい。極めて優れたシャシーバランスのおかげで、295という幅を持つタイヤは、常にクルマのフロントを追いかけてくれる。