初試乗 新型 ランドローバー・ディフェンダー・プロトタイプ 2020年リリース
公開 : 2019.08.10 09:50 更新 : 2022.08.08 07:55
テスト用ロボットマシンで24万kmのテスト
「新しいディフェンダーに対する見られ方もわかっています。先代よりもずっと複雑になったことは間違いありません。一方で耐久性や走破性、軽量化に対する技術的なハードルはずっと単純になっています。だからといって誰にでも作れるクルマではありません」
ランドローバーがクルマを開発するに当たり使用してきた、とあるテスト装置がある。エンジニアが6DOF(Six Degrees of Freedom:自由の6軸)と呼ぶもので、非常に高度で先進的な、巨大なロボットツール。オンロードやオフロードを想定し、クルマをあらゆる方向に、複雑に自由に動かすことができるという。6軸とは、前後左右に上下、ピッチ、ヨー、ロールとなる。
「スタッフが乗車してテストした環境としては、このテストコースの他に、舗装路のハンドリングコースやブロック状の石畳など。縁石に乗り上げたり、ジャンプしたり、底打ちするような強い衝撃なども、デジタルデータでログを取ります」
「新しいディフェンダーの場合、6DOFの入力設定は従来よりも厳しくしています。ロボットは入力データに沿って、24時間、連日クルマへ負荷をかけ続け、その総量は1台で24万km、10年間分に相当します。テストが終わると、クルマをロボットから下ろして分解し、弱点を探して再設計を加えるのです」
発展途上国テストコースでの走行を30分ほど堪能したころ、製品技術チームのリーダー、アンディ・ディークスが、ディフェンダーを一新することが必ずしも正解だったと、確信しているわけではないことも漏らした。
新しいディフェンダー像を築き上げる
「新しいプロジェクトをスタートする際、本当に取り組むべきかどうかについて検討を重ねました。しかし、L633に長時間を費やして開発できたことを嬉しく思います」 と振り返るディークス。 「オリジナルのディフェンダーと同じシンプルさが特徴のクルマではありません。新しいディフェンダーは、独自の個性を持っています。しかし、タフで優れた走破性を備え、ディフェンダーの名前に相応しいはずです」
「先代のディフェンダーはシンプルで堅牢でしたが、オフロードを高速で走行するだけの快適性は備えていませんでした。しかし新しいL633は、考えられるどんな状況にも常に対応できるクルマになっています」 少なくとも、平日の早朝にエンジン・マネージメントの警告灯が付くことはもうないだろう。雨の日にパーキング・ヒーターから白煙が上がる心配もしなくて良い。
次期ディフェンダーは信頼性が上がったぶん、退屈なクルマになっていないだろうか。実際以上にランドローバーは過大評価されているのかもしれない。確認したいことは山ほどある。少なくとも、スパナを持って悪路に分け入り、凹んだボディパネルを簡単に交換するようなクルマではなさそうだ。
既存のランドローバーのプラットフォームやメカニズムを流用しながら、品質や信頼性は受け継いでいるに違いない。そしてエンジニアが想像できる限りの過酷な開発テストをクリアしている。否定的な見られ方を払拭するために。
ディークスは、新しいディフェンダーが市場でどのように受け止められるのか、充分に予想ができているようだ。もうじき、先代のディフェンダーを懐かしく感じるのか、新しいディフェンダー像を築き上げるのかが、明らかになる。先代が泥や砂利にまみれながら、その地位を確立したように。