2年に1度のビンテージカーの祭典 フランス「ビンテージ・モンレリ」レポート 後編

公開 : 2019.08.10 16:50  更新 : 2021.02.02 12:32

「DKW SS 250」オーナー:フィリップ・ビューリー

戦前のオートバイも多数参加している「ビンテージ・モンレリ」。ハーレーダビッドソンやインディアンなどは日本でも有名だろう。その中でも、フィリップ・ビューリーが持ち込んだDKW SS 250グランプリ・レーサーは特別な1台だ。1937年のリナ・モンレリでの参戦以来の凱旋となる。

スーパーチャージャーで過給される2ストロークエンジンは、始動させる度に多くの見物人を集める。排気ガスは白く色づき、往年のライダー、ユーワルド・クルーゲとワルフライド・ウインクラーの走りを彷彿そさせるシャープなエンジンノイズが会場一帯に響く。

DKW SS 250
DKW SS 250

「バイクはもちろん本物ですが、今日のライダーは本物ではなくわたしです。これは徹底したレーシング・バイクですが、パワーデリバリーは思いのほかスムーズ。プロトタイプのラバー・サスペンションもちゃんと機能しています。このサーキットは特に起伏が激しいので、オリジナルの空気の入ったシートがあれば、と思いました。初めての参加ですが、この雰囲気にすっかり虜になりました」 と笑顔で話す。

フィリップ・ビューリーは過酷な長距離ツーリングも慣れっこらしく、以前はパリからプラハへ、前輪が極端に大きい、歴史資料で見るようなペニー・ファージング自転車で欧州横断のサイクリング旅行もしたそうだ。「その時は1000kmを走るのに、10日間も掛かりました」

「ジャピック・サイクルカー」オーナー:エイドリアン・ワード

今まで一度も見たことのないであろう、ジャピックのサイクルカーが一度に2台も揃っている。
エイドリアン・ワードとニュージーランドのガース・トーマスがそれぞれ復元したサイクルカーが「ビンテージ・モンレリ」に集ったことには驚いた。火災で失われたサイクルカーが、サーキットに戻ってきたのだ。

「クルマの後ろに積載されている、有名な写真を見た記憶がずっとあったんです。ある晩に仲間とパブでビールを何杯か飲んでいるうちに盛り上がり、サイクルカーを作ろうと決めました。6カ月くらいで完成すると考えていましたが、実際には6年も掛かりました。ありがたいことに写真やフィルム動画が残っていたので、白紙から設計するのは案外簡単でした」

ジャピック・サイクルカー
ジャピック・サイクルカー

「1925年式のオリジナルの設計はHMウォルターズで、組み立てはウィンブルドンのジャービス社が行っていました。350ccと500ccのエンジンを搭載し、いくつかの記録も残しています。その後、グウェンダ・スチュワートによって買収されています。オリジナルのゼニス350ccユニットを見つけたのですが、オーナーは売却を拒否したので、借用というかたちで搭載しています。組み立ては友人で共同所有するマークが行い、ボディやフレームの制作はわたしの寒いガレージで進めました」

ジャピックはサーキットを快走し、大きな拍手を集めていた。「車両検査にも合格し、オートバイ乗りの友人にもオイル関係の問題解決に協力してもらっています。許可がもらえれば、英国のビンテージ・スポーツカークラブ(VSCC)のイベントにも参加したいと思っています」

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