BMW Z4 vs ポルシェ718ボクスター vs アウディTT 比較試乗 Z4、強豪に勝てる?
公開 : 2019.08.11 11:50
エンジンが問題 オープントップとして
一方、ボクスターのエンジンにこうした評価を与えることは出来ない。TTと比べても活気がなく抑圧されたようで、回転が落ちるのも遅く、さらに、一旦回転が落ちたあとの回転上昇にもまったく覇気が感じられない。
こうした状況はエンジン回転数が3500rpmを越えるまで続き、さらに例えこの回転数を越えても、聞こえてくるサウンドはまったくつまらないものでしかないことは、ボクスターTのハンドリングがこの3台のなかで圧倒的なシャープさを誇ることを考えれば残念でしかない。
このクルマのレスポンスとバランス、そしてその俊足ぶりは、他の2台とは違うレベルに達しており、その繊細なステアリングは、BMWとアウディをはるかに凌ぐ明瞭さで路面の状況を伝え、つねにそのシャシーは、まるでドライバーからの入力と路面からの反応がシンクロしているかのように感じさせる。
アダプティブダンパーをもっとも硬いセッティングにすると、路面への反応がわずかにタイト過ぎるように感じられるが、少しセッティングを緩めると、このクルマはその下に拡がる地形を優美で滑らかにトレースしてみせる。
ストロークの短いマニュアルシフトの感触も素晴らしく、操作そのものを楽しむことができるが、ボクスターの実力をフルに発揮させるには、エンジン回転数を高く保つ必要があり、そうすれば、このエンジンの物足りないパフォーマンスにも、少なくともひとつくらいは光明を見出すことができるかも知れない。
そうした時のボクスターは、優れた操作性とコミュニケーション能力を備え、ドライバーとの繋がりを感じさせる驚くほど見事なスポーツカーだと言える。
だが、例えそうだとしても、この3台のなかで自分のお金を投じるとすれば、選ぶのはボクスターではない。
間違いなく今回集まったなかでもっともドライビングが楽しい1台ではあるが、オープントップモデルであるということを考えると、実際のドライビングのなかでどういった景色を見せてくれるのかが重要であり、そうなるとボクスターの活気の足りないエンジンでは役不足ということになる。
僅差の勝利 まったく異なるスポーツカー
もう少しの活力、もしかしたらそれはもう少しシリンダーの数が多ければ実現できたのかも知れないが、それさえあれば、今回の勝者はこのクルマだったのかも知れないが、現状では勝者にはなれない。
そして、大差で敗れる結果となったのがアウディであり、それもまったく正反対の理由が原因だったのだから、クルマのというのは難しい。
TT RSはパフォーマンスとそれに相応しいサウンドを備えてはいたものの、ドライバーとの繋がりが感じられないこのクルマのドライビングは、オープントップモデルとしては物足りないものだった。
さらに、そのドライビングポジションはBMW、特にポルシェとはまったく異なるものであり、キャビンに包み込まれるというよりは、高く座らされるそのシートでは、このクルマのプラットフォームがゴルフであることを意識しない訳にはいかない。
つまり、例え僅差であったとしても、今回勝利したのはポルシェとアウディのちょうど中間のバランスを見事に実現したBMWであり、Z4であれば見事なエンジンに加え、日常使いにも相応しい洗練と見事な仕上がりを見せるキャビンを備え、もっとも高い高級感を感じることができる。
ポルシェほどの繊細さはないかも知れないが、このクルマはBMW流のやり方でドライバーを刺激するのであり、つまり、ボクスターとはドライビングに連れ出したくなるモデルだが、Z4であれば本当に速く走りたくなる気にさせるということだ。
分かり難い言い回しかも知れないが、それでも、こうした言いまわしによって、何がこの2台のまったく異なるスポーツカーを分けているのかをご理解頂けるだろう。