英国ツーリングカー選手権の中継 実況担当に密着 舞台裏さぐる 秘密は5つのルール

公開 : 2019.09.23 18:50

200万ポンドのトラック 対応は臨機応変

「スティーブはすでに到着しています」と、手早く紅茶を飲みながら教えてくれた。「いつも早めに現場に入るのです。多分トラックでしょう」

トラックとは200万ポンド(2億5440万円)もする中継車両のことであり、なかには多くのスタッフとともにスクリーンや操作パネルが設置され、まるで航空母艦を係留するためのロープほどの太さのあるケーブルが繋がれている。

ITVのコントロールセンターが7時間近い中継を管理している。
ITVのコントロールセンターが7時間近い中継を管理している。

ITV4での放送を含めた今日の中継は6時間45分にも及ぶ予定であり、クラッシュによる遅延が発生しなければ、11時13分から17時59分までが放送予定時間となっているが、例え秒単位でCM時間まで設定された38ページにも及ぶ詳細な台本どおりに中継がスタートしたとしても、ライダーとスタッフが臨機応変な対応を求められるケースは決して少なくはない。

現場スタッフは約15人で構成されており、ライダーと彼のアシスタントを除いた全員がトラックから今日のレース中継を行うが、クラッシュでレースが中断した場合に放送できるよう、ジネッタジュニアとF4シングルシーター、ミニse7en各レースも撮影している。

スタッフはプロフェッショナル

スターティンググリッドに隣接するコントロールタワーの真後ろに停車している、使い古されたメルセデス・スプリンターのスタッフ車両へとライダーとともに向かうことにした。

ライダーはここで中継の用意やひとびとへのインタビュー、原稿の準備、スタッフとの連絡、さらには、ランチやティータイムなど、すべての必要な作業を行っているのであり、今日は頻繁にトラックとこの車両を往復しながら、時おりこのクルマの上に設置されたガタつく台から中継を行う予定だ。

普段はインタビューする側のライダーだが、今回はクロプリーの取材を受けることに。
普段はインタビューする側のライダーだが、今回はクロプリーの取材を受けることに。

ライダーは非常に感じが良く、毎週覚えていられないほど多くのひとびとに会う人物らしいフレンドリーさを見せる。あの有名な笑顔でわれわれを出迎えると、ディレクターやカメラマン、音響担当、さらには、ライダーとディレクターのデビッド・フランシスが常に中継画像を確認できるよう胸にビデオスクリーンを掲げ後ろ向きに歩く男性など、スタッフ全員を紹介してくれた。

われわれの今日の目的を告げられても、スタッフはまったく動じていないようだ。

つねに冷静 主役は別に

ライダーからはぜひ中継での苦労話を聞きたいと思っていた。彼はどんなピンチに遭遇しても決して冷静さを失わないことで有名だが、決して長話をするようなこともしない。

クルマや天気、さらにはフォーミュラ1(ライダーは伝説的なF1コメンテーター、マレー・ウォーカーとともに中継を行っていた)について話したが、決して実況中継の厳しさ話題が及ぶことはなかった。

いつもどおりの中継を行うライダー。
いつもどおりの中継を行うライダー。

「長年多くのことを経験されてきたと思います」と、彼は穏やかに話す。「ピンチを乗り越える方法などご存知でしょう」

ライダーにとって、優れたコメンテーターとは決して主役であってはならないのだ。

いずれにせよ、今日の406分間にも及ぶ中継がもうすぐ始まろうとしているいま、彼には時間が無いようであり、11時13分の放送開始に先立って現場からは事前中継が行われる予定だが、もう10時30分だ。

ライダーの友人も数人がスラクストンサーキットを訪れており、彼らはグリッドウォークを楽しんでいる。

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