家族とオープン2+2 BMW 2002カブリオレ/トライアンフ・スタッグ 後編
公開 : 2019.08.24 16:50 更新 : 2020.12.08 10:56
ラジオまでオリジナルの美しいコンディション
コーナリングも機敏でありながら安定性も高い。シートに触れる背もたれや、ステアリングを握る手のひらを通じて、4本のタイヤがどんな状態にあるのかを、鮮明に知ることができる。ブレーキペダルの感覚も剛性感があり、ヒール&トウの良い支点にもなる。閉じた状態ではルーフの継ぎ目からキシミ音も聞こえてくるが、オープン状態でもしなやかなサスペンションが無粋な異音を立てることもない。
一方で、ポール・キャターオールがオーナーのMk1スタッグのアピアランスは、BMWよりも魅力的だ。特にトライアンフのスタイリングが引き立つサフラン・イエローのボディカラーが良い。ホイールは初期型のまま、BL、ブリティッシュ・レイランドのエンブレムがフロントフェンダーの付け根にに飾られている。Mk2に装備される、ヘッドレストとボディのストライプは付かない。
キャターオールが2オーナー目で、細部まで美しくラジオも純正のまま。「モーリス・マイナー・コンバーチブルのかわりとして、このスタッグを2004年に買いました。その前にまずガレージのサイズを測りましたけれど。一切の改造も施されていない、完全なオリジナルです。大容量のラジエターも付いていません」 と話すキャターオール。
Tバールーフのスタイルは、幌を畳んだ状態でも相当にスタイリッシュ。リアエンドからは挑戦的な角度で太いマフラーエンドが2本突き出ている。全長の割に全幅が狭く、BMWと比較しても車内は特に広く感じられない。ラゲッジルームも2002より小さいようだ。シートに腰を掛けると、足元の空間も浅く余裕はさほどない。
意外にも滑らかなコーナリング
ビニルレザー仕上げのシート自体はBMWの硬いシートよりも快適で、操縦性も良い。トライアンフは70年代初頭から警告灯を用いるようになっており、インスツルメントパネルには計器類が並ぶ。ドイツ製のインテリアほどシンプルではないが、ステアリングコラムの調整機構やシートのチルト機構は、BMWの場合はオプションでも選択できなかった。
握りやすいTの字をしたATセレクターをスライドして、ドライブに入れる。スタッグはそろそろと進み出すが、変速は滑らかなものの緩慢で、エンジンの回転数や音の変化から変速状況を知るしかない。ATのレシオは現代の高速道路を流すには低い設定だが、加速のスピードはマニュアルと大差はない。アクセルを踏み込むとキックダウンし、スタッグを充分に活発な動力を与えてくれる。
多くのひとにとって、駐車時のステアリングの軽さのありがたさは、コーナーでのフィーリングの薄さやフィードバックの少なさの不満を上回るだろう。だがスタッグは、ボディロールは小さくないものの、グリップ力も充分でフワついた感覚もなく、ピッチングもない。BMW 2002が得意な、路面の起伏が大きいコーナーでスピードを上げ過ぎない限り、カーブの続く道を滑らかに駆け抜ける。
スタッグのボディシェルはBMW 2002並みにしっかりしており、乗り心地も悪くない。しかしBMWと同程度にスピードを速めても、同程度に満足のいくドライビングを体験できるわけでもない。フィーリングは良いものの、BMWのようにクルマと対話し、操作を決めていくという感覚に乏しいためだろう。