SUVではなくドライバーズカー ポルシェ・マカンS 試乗 354ps V6ターボ
公開 : 2019.08.19 09:50 更新 : 2019.08.19 15:34
数年前ならトップグレード級のエンジン
マカンにポルシェ・ブランドに期待する優れたハンドリングとパフォーマンスを期待するのなら、オプション選択はとても重要となる。それを体現したクルマだった。例えばマカンSの場合、マフラーだけでも3種類の選択ができる。標準のマフラーにシルバーのマフラーカッターか、ブラックを組み合わせるか、スポーツ・エグゾーストシステムを選ぶか。
テスト車両には標準マフラーにブラックのマフラカッターの組み合わせだった。スタイリングのマッチングは良いが、発せられる排気音には物足りなさを感じるドライバーもいるだろう。新しいV6エンジンはスムーズでトルキーで、レスポンスも良い。走行パフォーマンスは悪くないが、どこか特徴的な個性という面では希薄でもある。
現代の多気筒ターボに期待する非常にワイドなパワーバンドを備え、低回転域でも、低速域でも、非常に活発にマカンを走らせる。数年前なら、トップグレードに搭載されていても違和感のないパワー感だ。だが最新のハイパフォーマンスSUVに乗り慣れているのなら、もう少し破壊的なパワーと、刺激的な音響を欲するかもしれない。実際、マカンを選ぶドライバーもの多くがGTSやターボに目移りするようだが、SUV基準でなくても、マカンSの直線加速が遅いとは決していえない。
一方で、アダプティブダンパーとコイルサスペンション、20インチ・ホイールという組み合わせは、洗練された優れた乗り心地を構成している。横方向のグリップ力も高く、ハンドリングレスポンスも良好。アルファ・ロメオ・ステルヴィオほど痛烈ではないが、操縦性は秀逸だといえる。
マカンなら選びたいエアサスペンション
だが素のマカンかマカンSか、エンジンの気筒数は問わず、エアサスペンションの方がより良いはずだ。乗り心地の面だけでなく、車高を調整も可能だから、オフロード走行で有用な最低地上高を増やすこともできる。
加えて車重に抗するようなハンドリングを備えるマカンの場合、バネ下重量やスプリングレートの最適化も重要で、エアサスペンションならより理想的でもある。どんなコンパクトSUVよりもコーナリング時の姿勢をフラットに保ち、バランスを崩すことなく機敏で直感的な操舵性を与えてくれることになるだろう。
だとしても、コイルサスペンションのマカンも十二分に素晴らしい。ほとんどのライバルを凌駕する優れたハンドリングとコミュニケーション性を備えていることには違いない。もし余計な考えが吹き飛ぶような痛快な走りを味わいたいのなら、ポルシェらしくさらに上位グレードということになってくる。
2019年版としてフェイスリフトを受けたマカンだが、実用性やボディサイズという点ではそのまま。ラゲッジスペースはハッチバック・モデルよりは広いものの、乗員スペースは特に広々というほどでもない。インテリアデザインは若干時代遅れ感がなくもないが、アップデートされたPCMインフォテイメント・システムが、大きく雰囲気を引き上げている。操作性の良い物理スイッチが残されている反面、ライバルが備える、遊び心のあるデジタルモニターは付いてこない。