クルマとは動くアート デザイナーに訊く アイデアは映画やゲームから 後編
公開 : 2019.09.22 20:50
番外編:動く芸術
2019年8月25日から9月2日までネバダ州のブラックロック砂漠にあるブラックロックシティで開催されるバーニング・マン・フェスティバルは、1986年にサンフランシスコで始まり、1990年に会場をブラックロック砂漠へと移している。
この毎年開催されるフェスティバルでは、反消費主義や自己表現といった、さまざまなアイデアが奔流のようにほとばしっているのを目にすることができるが、ここでも米国の自動車に対する愛は健在であり、主催者に「突然変異の乗り物部門」を新たに設けさせ、「動く芸術」としての作品展示を可能にしている。
この部門のスターのひとつであり、2012年から毎年展示されているのが、ヘンリー・チャンがデザインと製作を手掛けたミスター・フュージョンだ。
ラスベガス在住のデザイナーであり彫刻家でもある彼は借金までして、豆鉄砲のような16本のエグゾーストパイプをまるで迎撃ミサイルのように並べ、チューブラーフレームがリア中心に置かれたV8エンジンを取り囲む、長く、低く構えた異形の6輪マシンを創り出している。
自己表現としては、まさにこれ以上の存在など無いのかも知れないが、反消費主義としては失敗だろう。
その巨大なオフロードタイヤと、磨き抜かれたスチールのボディは、どちらかと言えばデトロイトに対する賛辞にすら見える。