ソフトウエアとデジタルデバイスを刷新 メルセデス-AMG GTロードスター 試乗
公開 : 2019.08.23 09:50
アシスト過剰気味なステアリング
乗り心地やハンドリングは優れているとはいえ、スーパー・スポーツカーというカテゴリーをリードできるには少々不十分な内容でもある。車格からして、手応えのある操縦感を期待するところがだ、実際はそれほどでもない。
ステアリングは軽く、オフセンター付近ではかなりダイレクトなところは良い。全幅と長いボンネットを意識する必要はあるものの、GTは驚くほど運転しやすく、超高速域でなければ狙い通りにクルマのラインを選んでいける。
しかしスピードを高めていくと、軽くダイレクトなステアリングフィールは、一貫性がなくアシスト過剰に感じられるようになる。スピードを保ってコーナーへ飛び込んでいくような場面では、やや過敏過ぎる。ステアリングのセンター付近での安定性がより高く、切り初めの重さがもう少しあれば、アグレッシブなレシオ設定もさほど問題ではないだろう。
しかし、切り始めではさらに舵角を与えるかのように積極的にアシストが入り、切り戻す場面でのアシスト量は少なく感じられてしまう。全体の設定がより自然で、直感的なものなら、理想的なのだが。
ボディコントロールの面では、ロール量は適度に抑制が効いているが、路面状況の変化に対しては不満も残る。郊外の傷んだアスファルトを走らせると、従来からGTは常に上下方向の動きに手を焼いている様子だった。最新のGTは、以前われわれが試乗した先代の上級グレードのクルマよりも、明らかに落ち着きが増し、滑らかな乗り心地を獲得している。
AMGにレス・イズ・モアは当てはまらない
だが減衰力は依然として高く、ブッシュ類も硬いため、細かく鋭い入力に対しては過敏に反応するきらいがある。大きな起伏やうねりに対しては、引き締まったなりにうまく受け流すだけに、気になってしまう。
市街地や高速道路レベルなら、GTはそのボディサイズを溢れるパワーで上手に隠している。しかし、さらにペースを速めていくと、大きく重いという事実を突きつけられる。路面が荒れるにつれて印象は徐々に悪くなり、ステアリングフィールのおかげで自信も薄れてしまうのだった。
サーキットのような理想的な路面環境なら、グリップ力は高く、機敏で不安定さもない。シャシーの素晴らしい素地が、見事なV8エンジンの実力と個性を存分に引き出させてくれる。しかし、より角の取れた、磨き上げられたスポーツカーとは異なり、GTは生々しく荒々しいマッスルカーのような感覚が常に付きまとう。
近年のスポーツカーの場合、レス・イズ・モア(少ないことは美しいこと)という言葉が当てはまる傾向もある。エントリーグレードには、アダプティブ・ダンパーやアクティブ4輪操舵システム、アクティブ・ロックデフなどが備わらないぶん、シャシー本来の性能を前面に楽しめるはず。しかしメルセデス-AMG GTが、ポルシェやロータスなどのような、ドライバーとの密な一体感を楽しむクルマではないことも明らかなようだ。むしろエンジンでならすAMGの場合は少ないよりも、潤沢な方が、よりAMGらしいのだろう。
メルセデス-AMG GTロードスターのスペック
価格:11万5875ポンド(1506万円)
全長:4544mm
全幅:1939mm
全高:1259mm
最高速度:302km/h
0-100km/h加速:4.0秒
燃費:8.2−8.1km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1615kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツインターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:475ps/6000rpm
最大トルク:64.1kg-m/1900−5000rpm
ギアボックス:7速ツインクラッチ・オートマティック(トランスアクスル)