メルセデス・ベンツXクラス オーストラリア試乗 積荷はビール 豪アウトバックめざす 前編
公開 : 2019.08.31 18:50
まるで「スピードボート」
なんとか最後のビール樽を積み込むことには成功したものの、どうなだめすかしても14本目はそれまでの13本と同じように荷台に収まることを拒否し、まるで教室で着席を拒む子供のように、Xクラスの荷台上で頭を突き出すだけだった。
つまり、最大積載荷重が引き下げられていたお陰で、われわれはこのメルセデス初のUTEに最大限の積載能力を発揮させられたのであり、Xクラスを限界まで追い込むことに成功したということだ。
1週間のアウトバック旅行には十分な量のクーパース・ペールエールを積み込んで、われわれは一路北へ、オーストラリアでもっとも雄大な山岳地帯のフリンダーズ山脈へと向かった。
タイヤが最初のひと転がりをしただけで、X250dが荷台に積まれたビール樽の影響を受けていることは明らかだった。最初は軽いだけに感じたステアリングだったが、いまやフィールに欠けるとともに、フロントタイヤの感触をまったく伝えてこない。
Xクラスはまるでプレジャーボートを思わせる垂れ下がったテールのお陰で、「スピードボート」というニックネームを授かることとなった。
カンガルーは無関心
それでも、エンジニアたちはこうした事態も明らかに予期していたようだ。太陽が地平線の向こうへと沈み、LEDヘッドライトが点灯しても、このクルマのセルフレベリング機構は前方を走るサポートカーのドライバーを幻惑するようなマネはしなかった。
だが、野生動物たちはさほど感激しなかったようだ。LEDのまぶしさには驚いたカンガルーだったが、このクルマにも特別の興味を示すことはなく、まるで道の反対側のほうがはるかに素晴らしい人生が待っているとでもいうように、懸命に飛び跳ねながら道を横切って行くだけだった。
緊急自動ブレーキを装備しているにもかかわらず、ブレーキペダルをしっかりと踏み込まなければ、Xクラスがオーストラリアの国章にも描かれているカンガルーやエミューを避ける能力は、1980年代に誕生し、ホールデン・コモドアとしてオーストラリアでベストセラーとなったオペル・レコルトとさほど変わらないものでしかない。
Xクラスのキャビンには、伝統的なメルセデス流と、チープなプラスチック部品やお馴染みのオーバルデザインなど、日産の香りが混在している。