ロードテスト トヨタGRスープラ ★★★★★★★★☆☆
公開 : 2019.08.24 11:50 更新 : 2021.03.05 18:46
走り ★★★★★★★★☆☆
先述したように、新型スープラの開発は、6気筒エンジンが入手できるか否かにかかっていたが、このクルマに乗ってみると、それがなぜか理解するのに長くはかからない。
BMW製のB58型3.0L直6シングルターボは、M2コンペティションに積まれる傑作と呼ぶべきS55型ツインターボユニットほどソウルフルでもないし、トップエンドでの凶暴さも持ち合わせない。しかし、素晴らしく力強いエンジンで、甘美でリニアな回り方を見せ、苦もなくパワフルな走りを味わえる。
1600rpmで発生した最大トルクは4500rpmまで持続し、最高出力は5000〜6500rpmで発生。トルクとパワーとのピーク発生域のギャップは、500rpmしかないのだ。エンジンサウンドは間違いなく電子的に高められているものの、豊かで元気づけてくれる。
発進加速は、タイムこそ上々だが、ドラマティックではない。ローンチコントロールを使うと、エンジン回転は2000rpmに保たれる。発進はややガタつき、トルクすべてをスムースかつ素早く車体を発進させるために使えているようには感じられない。ただ、スタビリティ系のアシスト機能をオフにすれば、盛大だが扱いやすいバーンナウトが起きる。
走り出せば、パワーデリバリーは非常にリニア。リアのワイドなミシュランは揺るぎなく、トラクションは心配ない。97km/hには4.4秒、161km/hには10.7秒で達するので、なかなかの速さだ。これはポルシェ・ケイマンGT4に匹敵し、この価格帯のスポーツカーの基準を大きく凌ぐことはないが、十分な競争力はある。
とはいえ、エンジンの熱狂ぶりや勢いは、レブリミッターが発動する6950rpmへ近づくにつれ衰えていく。クラスベストなモデルならば、そこからさらに貪欲なところを見せるのだが。そうは言っても、スロットルレスポンスはエクセレントで、高回転域ではターボラグがほぼない。
公道でのスープラが、レースマシンのようではなく、スポーティなGTカーだと感じられる理由はエンジンだけではない。ZF製8速ATのシフトアップはスムースで、期待したほど活発ではない。熱い走りを求めるドライバーなら、DCTのような速さと精密さが欲しくなるところだろう。
パドルシフトの動きも、スポーツカーの割にはやや平凡に感じられる。はっきり言えば、トヨタには操作を楽しめるMTの設定を求めたい。BMWは、このエンジンに合うそんなギアボックスを持っているのだから。