VW、「今さら」ディーゼル拡充のワケ ガソリンとどっちが買い得? 冷静な視点を

公開 : 2019.08.22 18:27  更新 : 2021.10.22 10:18

今になってディーゼル導入 メリットは?

欧州では、排出ガス規制のレベルがユーロ4程度にとどまるディーゼルも走っており、近年では大気汚染の原因とされている。

そのために欧州ではディーゼルのイメージが下がり、売れ行きも低下してきた。日本でも欧州におけるディーゼルの評判が報道されている。

ゴルフTDIが搭載するディーゼルエンジン。
ゴルフTDIが搭載するディーゼルエンジン。

このような状況で、VWがディーゼルの日本導入を活発化させるメリットはあるのか。その理由をフォルクスワーゲングループジャパンに尋ねた。

「確かにドイツなどの欧州では、ディーゼルに対する風当たりが強かったです。それが最近は、以前に比べると収まる傾向にあります」

「また日本では、依然としてディーゼルの人気が高く、ティグアンパサートも好調に売れています」という。

日本国内のディーゼル人気を支える要因に、エコカー減税もある。日本で売られるクリーンディーゼルは、燃費数値などに関係なく、「クリーンエネルギー自動車」として自動車取得税と同重量税が免税になるからだ。

消費税率が10%に高まると、自動車取得税が廃止されて新たな環境性能割を施行するが、クリーンディーゼルの免税は継承される。自動車重量税も今と同じく免税だ。そして輸入車は価格が全般的に高いので、自動車取得税の税額も増える。

例えばメルセデス・ベンツE300ステーションワゴンアバンギャルドスポーツは、消費税8%の価格が893万円で、自動車取得税は22万3200円、自動車重量税は4万9200円だ。合計すると27万円を超える。

これがクリーンディーゼルなら免税だから、ディーゼルの価格がガソリンに比べて30〜40万円高くても、実質的な負担はほとんど変わらない。購入後に余裕のある動力性能を味わえて、燃料代も安くなれば、ディーゼルが明らかに買い得だ。

このような税制も影響して、日本ではディーゼルの人気が高い。今後も高機能と税金の安さは、メリットであり続ける。

従って日本では、VWがディーゼルを充実させる価値も高いわけだ。

ディーゼルへの視線 長所/短所を冷静に

販売店では「導入が遅れたこともあって納期が不明瞭な状態にあります。早ければ消費増税前の登録も可能だが、何ともいえません」

「それでもパサートなどではTDIの人気が高く、お客様の需要に対して供給が追い付かない可能性がある」という。

ディーゼルエンジン搭載のフォルクスワーゲン・パサート。
ディーゼルエンジン搭載のフォルクスワーゲン・パサート。    佐藤正勝

ディーゼルに対する風当たりの強い昨今ではあるが、技術には必ず長所と短所がある。

重大な短所を抱える場合、規制を設けてそれが露呈しないようにすることは大切だが、技術の否定はすべきではない。長所まで詰み取ってしまうからだ。

日本における乗用車のディーゼルは、規制によって一度は途絶えていた。それがマツダが力を入れたことで復活している。馴染みのあるVWゴルフにも用意されたことで、ディーゼルのイメージがさらに変わるかも知れない。

記事に関わった人々

  • 佐藤正勝

    Masakatsu Sato

    1964年生まれ。1984年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、八重洲PRセンターに入社。86年にF1/ルマン24時間を撮影後何かのスイッチが入ったらしく退社。フリーとなり国内外のレースを撮影。91年に撮影したDTMで、また何かのスイッチが入ったらしくどっぷりドイツ漬けに。現在は撮影のみならず、CS放送でのレース解説や雑誌への執筆も。
  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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