V12 NA ランボルギーニ・アヴェンタドールSVJロードスターに試乗 至高の1台
公開 : 2019.08.28 09:50
常にコントロールしやすいパフォーマンス
フライホイールも軽量なものに置き換えられているが、スロットルレスポンスはフェラーリ812スーパーファスト並みの、息が止まる鋭さはない。だが骨太感は半端ない。重力に抗するロケットのように力強く、8700rpmのレッドライン目がけてヒステリックな高周波音が高まっていく。クーペの中で聞いている限り、外で響くセンセーショナルなサウンドだったが、ロードスターの場合は、直接その興奮が体内へと響いてくる。
試乗はファクトリーそばの一般道だったが、その興奮のポイントに到達するのは簡単。355mm幅のリアタイヤのおかげで、2速で回るようなタイトコーナーであっても、SVJロードスターが保持するトラクションは望外に高かった。ステアリングの正確性も非常に高く、ロンドンの2階建てバスよりも少しだけ幅の狭いボディを、車線内に留めておくことも容易。
ターボの付かないエンジンは完璧なリニアリティさを持っており、低回転域からのピックアップでもシルキー・スムーズ。これだけのパワーを備えていながら、どの回転数からアクセルを踏み込んでも不意な爆発力に見舞われないということは、特筆に値する。全長は5mに迫り、全幅は2mを超えるボディサイズや、ハイパーな価格、驚異的なパフォーマンスレベルを備えていながら、常にコントロールしやすいとすら感じる。
路面が剥がれて空いた穴を通過しない限り、ストラーダモードを選んでおけば、SVJロードスターのクルージングは充分に快適。これだけ強固なボデイ構造と、引き締められたスプリング、フロントの軽い重量配分にも関わらず、シーンによってはリラックスすらできる。
視界の良いコーナーではコルサモードを選んで、クルマ全体のレスポンスを速め、サスペンションを硬めたくなる。SVJの秘めたダイナミクス性能の可能性に迫るために。フェラーリやマクラーレン、ポルシェほど限界領域での融通は効かないものの、高速域でのバランス性とグリップ力は素晴らしく、積極的にスピードを乗せていける。
優れたシャシーは感情的なエンジンのため
そしてルーフを取り外したSVJこそ、アヴェンタドールの理想形であることがわかる。ランボルギーニのフラッグシップモデルとして、先進的なテクノロジーを満載したシャシーを備えていても、それはひとえにエモーショナルな6.5LのV型12気筒エンジンを搭載するためのプラットフォームに過ぎない、というのは少しいい過ぎだろうか。
ランボルギーニのビッグモデルは奇抜なスタイリングと派手なサウンドが先行しがちだが、アヴェンタドール、特にSVJに関しては、白眉なドライバーズカーでもある。それを味わうためには、少し慣れも必要となるけれど。
屋根が開いた状態だと、アヴェンタドールへの乗り降りはずっと楽になる。ステアリングホイールはテレスコピック(前後)調整も可能だが、手前に寄せることで手のひらとフロントタイヤとの距離が遠くなり、感覚的にしっくりこない。テスト車両は右ハンドル車だったこともあり、ペダル類はかなり左側にオフセットしていた。いろいろ試しているうちに、丁度いい妥協点のドライビングポジションが見つかるだろう。
大きく付き出した、フロント・オーバーハングにも気をつけたい。スタートして最初の10kmくらいは、背後の12気筒エンジンよりも、長いノーズがどこかに擦らないか恐怖心にさいなまれることになりそうだ。それに軽量なハイパーカーの類は、本当の意味で快適なクルマにはなりえない。ボディサイズと、すべてを忘れてしまうような加速力は、必要以上にSVJロードスターの取り扱いに気を使わせる。
それでも見事なダイレクト感は、積極的にドライブする自信も与えてくれる。ブレーキペダルのフィーリングは、わたしの好みよりソフトだが、強烈な制動力を得るのに要する力は、とても少なくて済む。SVJロードスターはアンダーステアもオーバーステアも、乾燥した一般道では発生しない。さほど強い負荷を掛けずとも、サスペンションはしなやかに反応し、正確に処理してくれるのだ。