4.0Lの自然吸気フラット6 ポルシェ718ケイマンGT4 試乗 親しみやすい420ps
公開 : 2019.08.31 09:50
情熱的で急進的な回転フィール
そんな気持ちのままパワーを解き放つ。ケイマンGT4の楽しさのひとつに、そのモヤモヤした気持ちを上書きできるところがある。パドルシフトとターボが外されたことによる仕上がりは驚くべきもので、最近まで忘れていた感覚が呼び起こされる。目立ったボディキットを備えているが、先代のGT4と比較して、ダウンフォースは半分程度に留まっている。
最大トルクはレブカウンターが5000rpmを迎えるまで発生しないから、スタートダッシュは猛烈というわけではない。振り返ればケイマンGTSの場合、1900rpmだった。このGT4はドライバーが積極的にドライブしなければ、鋭くは走らないということ。ギアを数段下げて回転数を上げて、パワーバンドを掴み、リアタイヤに蹴り出させる。ステアリング・ホイールの裏にはオートブリップのボタンが付いているから、助手席の同乗者には自分でスロットル操作をしているように見えるだろう。
エンジンは見事な仕上がりだ。8000rpmというレブリミットに当てるまでもなく、回転の高まりは情熱的で急進的で、驚かされる。回転数は8000rpmを超えて、さらに高まろうという勢いも伝わってくる。恐らく911ならそれが可能なのだろう。
マニュアルトランスミッションのレシオ設定は先代GT4と同様にロング過ぎるが、変速時のフィーリングは基本的に完璧。動作も速く滑らかで、機械的なアクションの重さ感が心地いい。こんなクルマで変速を繰り返す楽しさは、なんと表現したらいいのだろうか。
速く楽しく、極めて親しみやすい
MTと自然吸気のエンジンの組み合わせであっても、パワートレインはあくまでもケイマンの秀逸なシャシーを支える側にある。標準装備のミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2タイヤが生むグリップレベルは無限と思えるほどに高く、むしろオプションでより硬く滑りやすいタイヤが選べても良い。電動パワーステアリングも、現存する中で一番のできと思える。
これらが融合することで、どんなチャレンジングな道であっても扱いやすく、息を呑むようなスピードで、狙った通りの精度で、滑らかにGT4は駆け抜ける。アルピーヌA110を上回り、わたしが今まで運転したミドシップ・スポーツカーの中でもベストの振る舞いだと断言できる。
丁度いいリミテッド・スリップデフの効きが、コーナー進入時には穏やかにアンダーステアを生む一方で、コーナー出口では欲しいだけのオーバーステアを提供してくれる。リアエンドの動きは想像通りに過敏だが、挙動はリニアだから、捉えて補正もしやすい。
新しいケイマンGT4は、理想のポルシェGTへと導いてくれる、ほぼ完璧な入り口のクルマだ。速く楽しく、ありえないほどに親しみやすい。一方でポルシェとしては、それが優れたクルマであっても、さらにもっと優れたクルマが欲しくなるような味付けが必要となる。GT4のオーナーが走りを追求して卒業すれば、今度は911 GT3というさらに懐の深い受け皿が待っている。ポルシェならではの魔法で、良い仕事をしたといえるだろう。
ポルシェ718ケイマンGT4のスペック
価格:13万500ポンド(1696万円)
全長:4456mm
全幅:1801mm
全高:1269mm
最高速度:304km/h
0-100km/h加速:4.4秒
燃費:9.1km/L
CO2排出量:251g/km
乾燥重量:1420kg
パワートレイン:水平対向6気筒3995cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:420ps/7600rpm
最大トルク:42.7kg-m/5000rpm
ギアボックス:6速マニュアル