新型 アウディS6アバントTDIに試乗 V6ディーゼルターボに48Vハイブリッド

公開 : 2019.08.30 09:50

インテリアの雰囲気に反する排気音

高速道路をひたひたと目的地へ運転する感覚は、優れたアウディの形容詞がそのまま当てはまる。静かで洗練され、少し親近感がない。満タン時の航続距離は965kmに届き、風雨が強い中でも給油をしなければならない機会はずっと少ない。長距離移動も一息でこなせるだろう。

高速道路を降りて、路面状態の良くない一般道を走らせる場面でも、A6に準じた乗り心地を備えている。試乗車に装備されていたオプションのアダプティブ・サスペンションがその中心的な役割を果たしているはずだが、英国では選択できない。だが4輪駆動システムのクワトロが叶えるグリップ力は、適度に重み付けされた電動パワーステアリングのフィーリングと、低回転域からの極太のトルクと相まって、とても安楽。車線の中央にクルマを留めておくことも意識しないで良い。

アウディS6アバントTDI
アウディS6アバントTDI

S6アバントを走らせていると、トライバーの後ろにクジラのような空間が広がっていることも忘れる。コーナリング性能やハンドリングの正確性からは、その増えた車重を感じさせる部分はないといっていい。ドライブモードは変更ができるが、ダイナミックを選択しない限り、その差は明確ではない。

だがダイナミックを選ぶと突然V6が暴れ始める。荒々しいエグゾーストノートは特徴的なもので、古い4ストロークのバイクが後ろに付いてきているのかと思ったが、S6自体が打ち鳴らすものだった。アウディの落ち着いた上質な車内の雰囲気には似つかわしくない、ステアリングを握る手のひらのフィーリングと一致しない、物理的な体験とは異質な音響だといえる。不快ではないとはいえ、この洗練されたクルマの雰囲気にはあまりにも一致しないから、少し奇妙な体験にも思えてしまった。

先進的な技術と快適性という訴求力

8速ティプトロニックATはパドルを弾いて自らのタイミングで変速もできるが、気がつくとATが変速をし始めている。パドルで変速しながらの運転は魅力的だが、これほどの低速トルクを備えていると何速を選んでいるかは、さほど意味をなさなくなる。AT自体任せでも、変速はスムーズでシームレスだ。

試乗車にはオプションがかなり盛り込まれていた。1950ポンド(25万円)のツアーパッケージと1375ポンド(18万円)のシティパッケージ、700ポンド(9万円)のパーキングアシストなど。高価なオプショだが、洗練されたS6を選ぶなら悪くない装備だと思う。800ポンド(10万円)のバング&オルフセン製サウンドシステムは、いつもながらお薦めできる。

アウディS6アバントTDI
アウディS6アバントTDI

クルマ好きにとっては、アウディは定番の選択肢ではある。上質なエグゼクティブ・サルーンやワゴンで長時間を過ごすドライバーにとっては、先進的な技術と優れた快適性は、見過ごせないほど高い訴求力がある。気になる点といえば、クルマとの一体感の薄い、冷淡なドライビングフィールだろう。アウディにとっては、いつもの指摘にはなるけれど。

だがS6は、獰猛なRSの領域に迫ることなく、アウディのステレオタイプに対し、充分に抗した仕上がりを得ている。コーナーでのライン取りも良好だ。クルマでの長距離旅行を頻繁に楽しみ、6万ポンド(780万円)の予算があるのなら、S6はひとつの答えになりえるだろう。

アウディS6アバントTDIのスペック

価格:6万750ポンド(789万円)
全長:4939mm
全幅:1886mm
全高:1470mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:5.1秒
燃費:12.6km/L
CO2排出量:171g/km
乾燥重量:2020kg
パワートレイン:V型6気筒2976ccターボ
使用燃料:軽油
最高出力:349ps/3850rpm
最大トルク:71.2kg-m/2500−3100rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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