希有な直6ディーゼル BMW 330d Mスポーツ 試乗 英国でのトップグレード
公開 : 2019.09.02 09:50
ライバルの少ない直列6気筒ディーゼル
この手のクルマで、6気筒のディーゼルエンジン自体を選ぶことも難しい。ジャガーもアルファ・ロメオも、メルセデス・ベンツも今はラインナップにないし、ボルボは4気筒のみで、レクサスはディーゼルエンジンをここ数年用意していない。
唯一アウディにはA4 50TDIとS4でV型6気筒のディーゼルが選べる。だが、BMWが高性能なディーゼル・エクゼクティブ・サルーンという市場を圧倒する好機には違いない。さらに洗練され、トルキーでズムーズになり、滑らかに吹け上がるディーゼルエンジンは、偉大な存在だとすら思う。
力強い動力性能は、レブカウンターが1500rpmを超えた辺りから4500rpmまで湧き溢れる。踏み始めのスロットルレスポンスは少し尖すぎ、渋滞時の車間距離の調整などには少し気を使うかもしれない。だがシフトアップしながらの中間加速や、一時的な減速後の加速時でも、エンジンは常にレスポンシブ。高負荷時で回転数が高まっていっても、4気筒ディーゼルよりも明確に滑らかだ。
ZF製の8速ATとの相性も2.0Lエンジン並みに良好だが、キックダウンが少し遅く感じる場面もあった。その見返りといえるのが、ハイパフォーマンスを備えていながら、優れた燃費を実現していること。今回の試乗ではほとんど燃費を気にせずに高速道路や一般道を、充分な距離走行したが、燃費計には16.6km/Lという数字が表示されていた。
19インチホイールにMスポーツサスペンションの組み合わせは、G20 3シリーズの中で最も角の取れた乗り心地とハンドリングを提供しているわけではないが、不満を感じるレベルでもない。アダプティブ・ダンパーにランフラットではない通常のタイヤの組み合わせなら、ダイナミクス性能は大きく引き上げられるに違いない。
ドライバーにとってクラス一番の輝き
路面のうねりに対する処理や低速域での乗り心地は、これまでに試乗したG20型3シリーズのグレードの中では、僅かな差とはいえ、一番優れている印象。荒れた路面ではザラついた印象もあるが、小さな起伏が連続するような場面でもボディコントロールは巧みで、ロードホールディング性も高い。
最適な装備を得た3シリーズを超える、ハインドリングや乗り心地を備えたライバルモデルを見つけるのは至難の業となるだろう。Mスポーツ・プラスのトルクベクタリング・リアデフは、中回転域の太いトルクを確実に受け止め、加速時であっても繊細でコントローラブルなハンドリングを実現。速度域を問わず、非常に正確で一貫性がある。地球上に存在するあらゆるスポーツ・エグゼクティブ・サルーンの中で、その魅力は一番の輝きとすらいっていい。
ディーゼルエンジンにプラグイン・ハイブリッドを組み合わせたCクラスは環境負荷で優れ、新しいS4はBMWを超えるパフォーマンスを備えていながら、価格差はさほど大きくはない。テスラ・モデル3やボルボS60という選択肢もある。だとしても、特に運転にこだわりを持つドライバーにとって、優れたハンドリングと燃費に高い実用性を兼ね備えた330dの訴求力は、ライバルを凌駕するものではないだろうか。俊足で上質で扱いやすく、価格的にも競争力は強い。
AUTOCARとしては、相対的に評価しなければ気が済まない。早々にどのエグゼクティブ・サルーンがベストなのか、比較テストをしてみたいと考えている。
BMW 330d Mスポーツのスペック
価格:4万1565ポンド(540万円)
全長:4709mm
全幅:1827mm
全高:1435mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:5.5秒
燃費:16.9−15.6km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1665kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccツインターボ
使用燃料:軽油
最高出力:264ps/4000rpm
最大トルク:59.0kg-m/1750rpm
ギアボックス:8速オートマティック