字幕付き動画 スズキ・ジムニー vs SJ410 オフロードでの楽しさは不変
公開 : 2019.09.01 07:50 更新 : 2019.09.04 15:46
旧型からコンセプトは変わらず
これは欧州ではSJと呼ばれる2代目ジムニーだ。このクルマはスペインでサンタナが製造した。この血統は見た目以外にも引き継がれているのだろうか。1972年、スズキは軽量コンパクトな軽規格のオフローダーを欲していた。LJ(ライトウエイト・ジープ)10がその答えだ。
2気筒の2ストロークエンジンを搭載し、最高速度は80km/hも出ないが、それは問題ではない。テストにおいてスズキは競合をビーチに集め、砂に埋もれる様を横目にケータハム7と同等の車重のLJ10は走り続けた。
そして3代目は軽いフェイスリフトを受けながら20年にわたり販売された。1998年の登場だが、それほど古さを感じない。当初は評価も芳しくなく、悪く書かれることもあった。当時の普通車と比べて不自然に車高が高く見えたのだ。しかし20年経つ頃には世間はSUVで溢れジムニーのような乗り味は普通になった。
とは言えそのオフロード性能は健在だ。このチャンネル内でも泥の中で活躍する姿をご覧いただける。しかし今回はSJ410に乗っている。これは初代ジムニーではない。初代は日本国外ではそれほどの知名度がなく、当時はこのクルマをスズキ・ジープと呼んでいたが、ジープはもちろん他社の商標だ。
しかし1980年代に英国で人気となり、世界中で生産されはじめた。これはスペインのサンタナ製だ。SJと名付けられているが、ジムニーの一種だ。英国ではジムニーという名称は1980年代後半から使われている。
この個体はわれわれのカメラマンが所有するものだが、長い間私有地のオフロードで使われており、車検を取得したのは最近のことだ。敷地外に乗り出さないよう小さく注意書きがされている。およそ12万kmの走行距離の大半がオフロードなのだとしたら、32km/h以上でステアリングが壊滅的な曖昧さを見せる理由だろう。
しかも32km/h以上でその速度を知るのは困難だ。スピードメーターは48km/hから72km/hの間を指している。両者の間を頻繁に行き来するのだ。もちろん進路を変えようと思えばちゃんと曲がってくれる。このクルマの行く先を邪魔するものはない。
1Lまたは1.3Lのエンジンが用意される。これは1Lモデルで、たったの45ps程度しかない。しかし車重はわずか900kgだ。パワーは45ps程度でトルクはおよそ7.6kg-mだ。しかし走行に支障はなく、ギアボックスも素晴らしい。初期モデルは4速だったが、この1989年型は5速だ。非常に良く入るギアでエンジンも甘美だ。キャブレター式だが良くできている。
オフロードでの走りを第一に設計
ジムニーらしい乗り味は変わっておらず、最新型のジムニーにも引き継がれているが、確かに古さを感じる。構造的には大きな違いはなく、短く軽いクルマでシャシーとボディは独立している。ジムニーは長距離向きではなく公道では頼りないというひともいる。SJに乗ってみれば新型がいかに進んでいるかわかるだろう。
しかしこのクルマはまず第一にオフローダーであり、公道での走りは二の次だ。英国のユーザーの多くは適切な使い方をしていない。1980年代にはコーナリング中の横転事故が発生した。不思議なことではない。これはスズキが送り出した都市部で使われるようになった初めての小型オフローダーであり、普通車のようにハードなコーナリングをすれば横転することもあるだろう。これはオフローダーなのだ。
さて、ステアリングが合わない道を離れ、走りを試そう。しなやかさが少しだけこのSJは最新のジムニーに劣ると思う。今は2Hモードだが、後ほど4Hを試し、もし必要なら4Lにも入れてみる。この1L自然吸気エンジンは溢れるトルクとはいかないが、こんな傾斜したオフロードでも手を離してアイドルで進める。少し速めだがしっかりと進む。
このクルマの良さは非常に小さいことだ。しかし車内は十分に広い。クルマをぶつけることもなさそうだ。素晴らしいクルマだ。視界は良好で四隅が完全に見えるばかりか、手が届きそうだ。
ガタガタとガイコツが箱の中で暴れているような音がする。わだちの中を狙い通りに進め、楽しい。現行ジムニーと比べるとどうだろうか。もちろん2世代も前のクルマだが、今のジムニーを定義づける主なキャラクターである小さく軽いボディに良く回るエンジンと優れたギアシフトなどはすべて揃っている。
毎日使える繊細なクルマではないが、それは今も昔も変わらない。しかし休日用のクルマとして所有し、晴れた日に屋根を開けてグリーンレーンをドライブしてどこかで昼食をとり、また走って帰る。そんな所有スタイルで走りを楽しむクルマだ。バスや電車では得られないクルマがもたらす自由さと素晴らしさを味わえる。
素晴らしいクルマだが、欠点も多い。洗練されておらず、公道での性能も低く、緻密さにも欠けている。しかし非常に楽しく実力もあり、とにかく終始魅力的なのだ。どの時代のジムニーも自動車史における愛すべき一台だと言わざるを得ない。