希少価値の5.0L自然吸気V8 レクサスRC Fへ試乗 気になるATと車重

公開 : 2019.09.04 09:50

マイナス点は8速ATの設定と軽くない車重

RC Fのエンジンは、変速せずに回している限り、ターボチャージャーを搭載したライバルより好印象。発するサウンドや個性、レスポンスなどで、アドバンテージは明確だ。4000rpm以下では驚くほどエネルギーを感じられないことは事実ながら、回転数を高めていくと、10年ほど前にBMWのMモデルやアウディRSが搭載していたような、硬質で張り詰めた、心躍る金属音が響き始める。新しく採用されたエアインテークが、さらに大きな吸気音を発するようにもなった。

その喜びの足かせとなっているのが、8速AT。低速トルクが不足していることをトランスミッションがカバーできていない様子で、数段飛ばしで手動で変速するような場面でも、何の警告もなく別の段数が選ばれてしまうことがある。最もスポーティなドライビングモードを選んでいても、イライラするほどシフトダウンを躊躇する傾向も見られる。

レクサスRC F トラックパック
レクサスRC F トラックパック

トラックパックに関しては、お好みで、という程度。サーキットを走る目的のクルマではない。レクサスのエンジニアは新しいアルミニウム製のシャシーやサスペンションに設定変更を施し、軽量化にも努めてはいるが、BMW M4などと比較すると、以前として車重は200kgほど重いのだ。

熱心に運転した場合のボディコントロール性やグリップレベル、ステテアリングの正確性は、80%くらいまでの領域で走らせている限り、充分な水準を保持している。それ以上にプッシュしていくと、俊敏性や洗練性、懐の深さといったところで、クラスベストほどのものは得られない。サーキットで走らせれば、軽くないボディの存在を思い知るだけだろう。

トラクションは良好で、トルクベクタリング機能の介入はほとんど知覚できなかった。またカーボンセラミック・ブレーキの仕上がりは高く評価したい。標準装備のブレーキとはまったく異なり、ペダルを踏み込んだ感覚もシッカリ感があるし、制動力も力強い。

LCとRCとの微妙な住みわけ

ほかにも、素晴らしく快適なフロントシートながら、取り付け位置が高すぎ、身重の高いドライバーは実際以上に窮屈に感じてしまう。後席のヘッドルームにも余裕はない。インフォテインメントシステムなどはアップグレードされてはいるが、依然としてドイツ勢に分があることも否めない。

RC Fは進歩の激しい自動車産業の中にあって、どこかクラシックなマッスルカーのような雰囲気から脱することができていないようだ。オールドスクールを狙った良さと、ただの時代遅れとの、微妙なボーダーライン上にあるように感じてしまう。しかも価格は、シンプルなマスタングとの対比も難しいほどに高価。

レクサスRC F トラックパック
レクサスRC F トラックパック

日常的にクルマを利用するという範疇なら、とても快適にRC Fと付き合えると思う。乗り心地は驚くほどしなやかで洗練されているし、トランスミッションも穏やかに走らせている限りは、遥かに滑らかに変速をこなしてくれる。インテリアも、美しい造形に高級な素材とが組み合わされ、典型的な心地よい空間にまとめられている。

だが、より訴求力の高いレクサスLCという存在がある中で、RCを完成度の高いスポーツカーではなく、魅力的なグランドツアラーとするのなら、その仕上げ方はもう少し煮詰める必要があるのではないだろうか。LC500なら同じV型8気筒エンジンを搭載し、実は価格差もそれほど大きくはない。トラックパックではなく、カーボンファイバー製のパーツが多用されるトラックエディションの方には、ドライバーへのより高い訴求力を期待したいところだ。

レクサスRC F トラックパックのスペック

価格:7万2650ポンド(944万円)
全長:4710mm
全幅:1845mm
全高:1390mm
最高速度:270km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.3秒
燃費:8.4km/L
CO2排出量:258g/km
乾燥重量:1810kg
パワートレイン:V型8気筒4969cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:463ps/7100rpm
最大トルク:52.8kg-m/4800rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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