進化の名に偽りなし ランボルギーニ・ウラカン・エボに試乗 自然吸気V10 640ps

公開 : 2019.09.05 09:50  更新 : 2019.09.05 19:23

一体感の強い刺激的なドライビング

ウラカン・エボは、日常的な生活で数キロ程度の距離を走っているだけでは、マクラーレン720Sのように親しみやすいクルマではない。そもそも視界が極めて悪い。想像以上に傾斜したフロントガラスと低い車高は、まるでポストの隙間から見渡しているようだし、午後になって日が傾いてくると、ダッシュボードの反射がフロントガラスに映り込む。前方の道路の安全性を確認するだけでもひと仕事だ。倒れかかったAピラーはコーナリング中の視界を遮るし、後方視界も限定的。720Sの完成度の高さに改めて気付かされる。

最も穏やかなドライビングモード、ストラーダを選択していても、民主化されたスーパーカーのマクラーレン並みの乗り心地にはならない。シートも硬く、数時間運転していなくても、体が痛くなってくる。デュアルクラッチATも充分に良好な変速マナーを身に着けているとはいえ、720Sほど磨き込まれてはいない。だが、静かに開けた視界の良い道路に巡り会い、スポーツモードに切り替えれば、そんなことは気にならなくなる。

ランボルギーニ・ウラカン・エボ
ランボルギーニ・ウラカン・エボ

単にドライビングが刺激的なだけでなく、コミュニケーション力も豊かで一体感も強い。ステアリングを切り増していく毎に、フロントタイヤのレスポンスは鋭くなり、グリップレベルの余力も絵に描いたように伝わってくるから、ペースを速める自信が湧いてくる。720Sほど写実的ではないにしろ、充分なスキルと勇気があれば、限界近くまで攻め立てた走りを楽しむことができる。もっとも、一般道では法律を冒すことになるわけだが。

ここまで能力が高いと、もどかしさを感じるものだが、慣れるほどにコーナリングスピードを高めていけることに気付く発見は感動でしかない。エンジンの極めてリニアなレスポンスのおかげで、コーナリング中にスロットルを操作し、一糸乱れぬバランスを崩してテールスライドを楽しむことも難しくない。

コルサモードを選択すると、クルマ全体がさらにシャープになり、ウラカンはさらに機敏に反応するようになるが、一般道ではダンパーの設定はいささか硬すぎる。とはいえ、その刺激に陰りが出るわけではないけれど。

正真正銘のスーパーカー

最大トルクの発生回転数が6500rpmに設定された情熱的なエンジンも、ターボチャージャーが席巻する今のご時世では痛快極まりない。回転数が増すほどに獰猛性に拍車がかかり、それにつれてクレッシェンドしていくサウンドトラックは、果てしないほどにドラマチック。

デュアルクラッチATは、マニュアル操作でもエンジンの回転数の変化に充分ついていけるほど瞬間的に変速をこなすから、気がつけば殆どの時間がマニュアルモードだった、ということもあるだろう。ただし余り楽しみすぎると、恐ろしい燃費だけでなく、軽い難聴になるのではないかと心配になってくる。だが取り巻く環境を見るほどに、最後の純粋な自然吸気V型10気筒となる可能性は充分に考えられる。レブリミットまでしっかり回して、限られた命を楽しまなくてはもったいない。

ランボルギーニ・ウラカン・エボ
ランボルギーニ・ウラカン・エボ

ランボルギーニ・ウラカンは刺激的で陶酔的で、感動するほどに機敏なスーパーカーだ。心拍数を速め、アドレナリンが溢れてくる感覚には中毒性がある。一方で、ライバルモデルとなってくるマクラーレン720Sは、より包括的なパッケージで勝っている。視界も優れ運転しやすいし、洗練され、一体感も秀逸。ステアリングホイールやブレーキペダルへ伝わってくるフィーリングも、マクラーレンの方が一枚上手ではある。

だが、マクラーレンはランボルギーニほどの個性を備えていない。ウラカン・エボこそ正真正銘のスーパーカーと呼ぶにふさわしく、一生ともにしたいと思えるエンジンには、愛すべき野生が宿っている。マクラーレン720Sの方が日常的に親しみやすく、サーキット走行でもより速いタイムで周回できるかもしれない。だとしても、わたしが夜見る夢に出てくるのは、ランボルギーニだと思う。

ランボルギーニ・ウラカン・エボのスペック

価格:20万6552ポンド(2685万円)
全長:4520mm
全幅:1933mm
全高:1165mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:7.2km/L(WLTP)
CO2排出量:322g/km(WLTP)
乾燥重量:1422kg
パワートレイン:V型10気筒5204cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:640ps/8000rpm
最大トルク:61.1kg-m/6500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

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