ピスタ級性能を毎日楽しめる フェラーリF8トリビュートに試乗 V8は720psへ

公開 : 2019.09.06 09:50  更新 : 2021.08.05 08:11

FDE+でコーナー脱出速度は6%アップ

ハイパワー化による直線性能の向上と、空力性能の向上によって、ハンドリング性能の向上も期待できるわけだが、フェラーリはそこへ知的な電子制御システムを付加した。バージョン6.1へ進化したサイドスリップ・コントロール(SSC)は、オーバーステアの自由度を高めるとともに、自然な介入でタイヤの摩耗と、赤っ恥なスピンを防いでくれる。このシステムはフェラーリ・ダイナミック・エンハンサー・プラス(FDE+)と呼ばれる、F8トリビュートで新導入された機能と協調して働く。

FDE+は非常にダイナミックなトルクベクタリングとスタビリティコントロール・システムを統合したもので、ブレーキを微妙に効かせることで、コーナーの脱出速度を高めてくれる機能。このFDE+の設定幅は大きく、レースやCTオフモードでも作動させることができる。

フェラーリF8トリビュート
フェラーリF8トリビュート

フェラーリによれば、SSCとFDE+との相乗効果で、488GTBよりもコーナーの脱出時の速度が6%も速くなるとしているが、かなりの効果だといえる。スプリングとダンパーも手が加えられているが、基本的には488GTBのものと同じだという。

軽量化の面では、チタン製のエンジンコンポーネントの採用に加え、レキサン樹脂(ポリカーボネート)のリアガラスに、軽量なフロントとリアバンパー、カーボン製のスポイラーなどを用いることで488GTB比でトータル30kgをダイエット。結果、F8トリビュートの車重は1435kgになった。488ピスタのオーダーが締め切られると、オプションで488ピスタ・スタイルのホイールも選択できるようになり、さらに10kgを削ることができる。

パフォーマンスを高めるためのデザイン

F8トリビュートのドアハンドルを握る前に、ピニンファリーナ社ではなく、フェラーリ社内でデザインされたアピアランスを簡単に確認していこう。空力性能を追求したボディは、伝統的な意味でのエレガントさを感じ取ることは難しいが、誰の目にもアグレッシブに映るデザインは魅力的に思える。ルーフパネルとドアパネルは488GTBからのキャリーオーバーだが、それ以外の部分はまったく新しい。すべてのエアスクープ、屈折面、エアアウトレットなどのすべてが、パフォーマンス向上のために仕上げられている。

インテリアの目指すところも明らかだ。低いドライビングポジションはクルマの運動軸の中心。フェラーリではおなじみの、ひさしの伸びたレブカウンターとTFT液晶モニターのインスツルメントが正面に来る。ステアリングホイールは新しく直径がひと回り小さくなり、指で届く位置に主要なコントロール系がまとめられている。

フェラーリF8トリビュート
フェラーリF8トリビュート

奥深い位置に取り付けられたフロントガラスは幅が広く感じられ、前方視界は良好。ダッシュボードのシンプルなデザインが、軽快感を生んでいる。だが仕立てはいつものフェラーリらしく上級で、ソフトレザーがふんだんに用いられ、カーボンファイバー製のトリムパネルがアクセントを付ける。

ステアリングホイールのスターターボタンを押してV8エンジンを目覚めさせると、ひと吠えして落ち着いたアイドリングを始めた。右側のパドルを弾いて7速デュアルクラッチATをつなぎ、スロットルに触れれば、たちまち鋭く発進する。0-100km/h加速は2.9秒だというから、バカバカしいほどに速い。マクラーレンの主軸モデルよりも、F8トリビュートの方が一枚上手に感じる。

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