ロードテスト テスラ・モデル3 ★★★★★★★★☆☆
公開 : 2019.09.14 11:50
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
テスラの目標は、モデル3を、モデルSより小さくシンプルで手頃な価格にすることだった。そのため、このクルマにエアサスやアダプティブダンパーは与えられず、パッシブダンパーとコイルスプリングが装備された。だが、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクと、コストはかかるがトラディッショナルなスポーツサルーンには好まれるセットアップだ。
シャシーは、ほぼオールアルミのモデルSに対し、モデル3は主に高張力スティール。ただし、外装パネルのいくつか、たとえばボンネットやトランクリッド、ドアやルーフはアルミ。おかげでウェイトは、このクラスのEVとしては軽めの1645kgに抑えられている。
もちろん、同じようなサイズの内燃エンジン車なら特筆するほど軽くはないのだが、モデル3はかなり大きなバッテリーパックを積むピュアEVだ。テストしたのはエントリーグレードであるスタンダードレンジのプラス仕様だが、そのバッテリーは2976セルをパックにしたもので、容量は50kWhある。
モデルSなどでおなじみとなったスケボー風シャシーの床面に敷き詰めているが、それらは異例に長いホイールベースの内側に収まっている。その電力は、リアに配置された電気モーターへ送られ、シングルスピードのトランスミッションを介して後輪を駆動する。
ロングレンジ仕様とパフォーマンス仕様は、70kWhバッテリーにグレードアップし、WLTCモードでの航続距離はそれぞれ560kmと530kmだ。さらに、フロントのサブフレーム部にもう1基のモーターが搭載され、四輪駆動となる。この第2のモーターはふたつのマウントで支持され、衝突時には後方の空きスペースへ転がり込む設計だ。
テスト車の航続距離は409kmだが、他社のEVと比べれば、これより安いモデルだけでなく、ずっと高価なものに対しても競争力がある。もっとも、テスラとしてみれば、決して例外的な数字ではない。
デザイン面では、テスラはこの価格帯やサイズのクルマほとんどで予期されるようなマッチョさを避けているが、それを払拭するのは難しい。占有面積はBMWの新型3シリーズより大きいばかりか、混み合った駐車場でも見失わないくらい背の高さもある。
目を細めたようなヘッドライトは古き佳きアグレッシブさを感じさせ、グリルレスのノーズはしかめ面のように見せている。そのノーズは非常に低い。フロントにエンジンを積まないので、パッケージングにより多くのコストをかけることができる。そのことは、キャビンを見れば明らかだ。