ロードテスト テスラ・モデル3 ★★★★★★★★☆☆
公開 : 2019.09.14 11:50
走り ★★★★★★★★★☆
総電力のパワートレインは、このモデル3でいよいよフルに本領発揮した印象だ。テスト車はエントリーモデルの上位グレードだが、数値に表れるパフォーマンスで言えば、比較対象になりそうなほとんどのコンパクトセダンを、たとえ相手が高性能版であっても凌いでいる。また、これまでテストした同価格帯の乗用EVよりはかなり速い。
暖かく晴れた日に、およそ90%ほどの充電量で、0-97km/hのタイムは5.8秒をマーク。公称値より0.5秒遅いことにガッカリする頑固なテスラ支持者もいるだろうが、2017年にBMW330eが出したタイムより0.6秒も速いのだから、失望するには当たらない。
思い切りスロットルペダルを踏み込んで発進しても、驚くほどスムースで落ち着いていて、トラクションが破綻する恐れもなく、みるみる速度が乗っていく。走り出してしまえば、制限速度までの加速はきわめて力強く、ウェイトから予想する以上に勢いがあるように感じられる。それは、ペダル操作へのレスポンスが歯切れよく、とにかく瞬間的であるからだ。
現実的な性能を推し量るのに最適な指標とわれわれが考える48-113km/h加速タイムは、2012年に計測した先代330dより速く、フォルクスワーゲンの現行ゴルフRにも0.5秒と遅れない。
日常的な速度域をもっとも多く使う現実的なペースに、オーナーが不足を感じることはないと断言しよう。このパワートレインが走り志向のドライバーを魅了するものではないとしても、それはおそらく静粛性の高さや不気味なまでのスムースさ、やむを得ない個性の薄さといった要素によるものだ。これだけ目新しいデジタル機器を多用しているのだから、ダミーのエンジン音を発するギミックでも用意すればよかったのだが。
ペダル操作に対するブレーキの効き方は、EVのからすれば上々で、精密かつ円滑に減速するのに不足はまったくない。回生ブレーキの複雑な制御が走行中に見られないので、かえって目立ってしまうくらいだ。ほかのEVは、速く走らせればそれに合わせ、穏やかに走ればエネルギー効率向上に寄与する。モデル3も、同じくらいのことができるはずだ。