アリエル・アトム4 試乗 目的地はシンクロトロン 英国最高の頭脳が集まる場所 前編

公開 : 2019.09.21 05:50

新たにホンダ・シビック・タイプRのエンジンを与えられたアリエル・アトム4に乗って、スピードと重量に関する究極の研究施設とも言えるシンクロトロンを訪問しました。当然のように風には見舞われましたが、素晴らしい旅となった模様をお送りする前編です。

雨乞いの魔法

もしサマセットの農家が干ばつの影響を心配して農作物のために雨を望んだとしても、わたしなら非常にシンプルな魔法を使って、灰色をした強力な雨雲を呼び起こすことができる。

アリエル・アトムでのドライビングを手配してさえくれれば、わたしの場合には必ず猛烈な雨が降るのだ。数週間も素晴らしい天気が続いたというのに、かなり前に準備を終えていた今回のアリエル・アトム4での試乗日が近づくと、気象庁は当然のように雷雨と洪水への注意報を発表している。

アリエル・アトム4
アリエル・アトム4

それでも、アリエルでジェネラルマネージャーを務めるトム・ジーベルトにとってこうした状況は見慣れたものであり、遠くで鳴り響く雷鳴を聞きながらクルーカーンにある工場に到着したときの彼の第一声は、「防水パンツは準備していますか?」というものだった。

こうした特殊なモデルを創り出すメーカーとしては珍しく、アリエルでは自らのマシンが公道上でテストされるのを躊躇したことなどない。創業者であるサイモン・ソーンダースはアトムのことを4輪のモーターサイクルだと表現しており、確かに外界に対するプロテクションという意味では似たようなものだ。

スピードと重量の関係

このクルマは風雨を大して防いではくれないが、そうした問題はユーザーの手に委ねられているのであり、クルーカーンの工場を出発するまでに、わたしはミシュランマンことビバンダムよりも着膨れしていた。

今回の目的地は、アトムが誇る軽さと英国らしさだけでなく、アリエル以外の多くのスポーツカーメーカーが受け継ぐことに失敗してきた革新の歴史を祝福すべく選んだ場所だ。

フルに性能を発揮すると、ダイアモンド・ライト・ソースは小さな街ひとつに匹敵するほどの電力を使用する。
フルに性能を発揮すると、ダイアモンド・ライト・ソースは小さな街ひとつに匹敵するほどの電力を使用する。

いまわれわれが向かっているのは、オックスフォードシャーにある英国最大のシンクロトロン施設、ダイアモンド・ライト・ソースであり、ここにある560mもの長さを持つビームラインでは、太陽光の100億倍の明るさを持つ超高密度なビームを創り出すことができる。

このビームラインは真っ先に思い付いたものの訪問の許可が得られなかったCERN(欧州原子核研究機構)にある原子(アトム)同士を衝突させる大型ハドロンコライダーではないが、それでもアトムに十分相応しいスピードと重量についての関係性を教えてくれる。

問題は他の走行車両

だが、まずは東へと進まなければならない。このアトム4はすべてが完全新設計であり、アリエルによれば、3.5から引き継がれたものは、クラッチとブレーキペダル、燃料キャップだけだというが、ウェット路面での挙動は先代と非常によく似ている。そして、わたしの雨雲を呼び寄せる能力が示すように、こうした路面状況はすでに個人的には非常に馴染み深いものとなっている。

小さな樹脂のプレートで出来たアトムのミニマルなエアロスクリーンだが、見事な防風効果を発揮しており、厚みのあるフロントノーズを持つクラムシェルボディは、巡航速度で走行している限りキャビンへの雨の進入も驚くほど少ない。

小さなスクリーンだが、それなりの防風効果を発揮する。
小さなスクリーンだが、それなりの防風効果を発揮する。

ドライバーズシートからはふたつのフロントタイヤという見事な景色を楽しむことができる一方、そのマッドガードは、最小限の溝しか切られていないエイボンタイヤの跳ね上げる水しぶきがキャビンへと侵入するのをほとんど防いでくれる。

問題は他の車両であり、一旦A303号線に乗ると、アトム4のフレームだけのようなボディは、他のクルマが巻き上げる水しぶきの波状攻撃になす術もなく、わたしの防水ウェアも遠くにストーンヘンジを眺める前にすでに役に立たなくなっていた。

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