アリエル・アトム4 試乗 目的地はシンクロトロン 英国最高の頭脳が集まる場所 後編
公開 : 2019.09.23 05:50
新たにホンダ・シビック・タイプRのエンジンを与えられたアリエル・アトム4に乗って、スピードと重量に関する究極の研究施設とも言えるシンクロトロンを訪問しました。当然のように風には見舞われましたが、素晴らしい旅となった模様をお送りする後編です。
ミニマリストの精神
それでもABSが装着されていないことなど大した問題ではなく、見事なペダルフィールのお陰で、フロントタイヤのロックを心配する必要などほとんどない。マニュアルギアボックスのフィールも素晴らしく、ホンダS660ゆずりのガッシリとしたシフトはこのクルマに完ぺきにマッチしている。
雨不足にもかかわらず、大きな水たまりが跳ね上げる水しぶきのお陰で服が乾く暇もなかったが、それでも、わたしはつねにニヤニヤしっぱなしだった。
小規模なスポーツカーメーカーでは、ときに楽観的過ぎたり、あまりに多くの車両生産を行おうと考えたり、さらには多くの高価な装備を与えようとしたりして失敗することがあるが、アリエルはつねにそうした失敗とは無縁の存在であり、ブランドを象徴するミニマリストの精神は、アトムのバスタブ形状をしたボディよりも深く彼らの中に埋め込まれている。
ルーフも無ければドアもヒーターも、ましてやほとんどのモデルでウインドスクリーンすら持たないのは、こうしたものを装着することで複雑さとコスト、そして重量が増加することになるからであり、なによりも、こうした装備はアリエルのモデルからドライビングへの集中を奪うことに繋がる。
パンツはずぶ濡れ 心から満足
ドライバーの気を逸らすもののないアトムのキャビンによって、アリエルは一途にその経験を積み重ねてくることが出来た。だからこそ、かつてのアトムよりもギアチェンジのフィールは素晴らしく、ステアリングには落ち着きが備わり、最小回転半径が小さくなるとともに、乗り心地はよりしなやかになっているのであり、こうした絶え間ない進化が車両のすべてで起こっている。
不要な装備を持たないというのがアリエルの指針であると同時に、進化というものも彼らにとっては重要なテーマなのだ。
サマセットへと戻る長い旅路に出発すると直ぐにふたたび雨が降り始めた。こうした状況が続くこと考えれば、アトムからよりこうした天候への適応力を持つモデルへと喜んで乗り換えたに違いなく、このクルマと比べれば、ケーターハムでさえ快適なモデルに思える。
だが、天候が回復すると工場にアトムを返却する前、最後に素晴らしい景色を楽しもうとA303号線を予定よりも早く降りることにした。
お陰で工場へと着くころには完全に元気を取り戻すことが出来たのであり、パンツはずぶ濡れのままだったが、このクルマを返さねばならないことが心から残念に思えた。
アリエル・アトム4のスペック
価格:3万9950ポンド(万円)
エンジン:1996cc 4気筒ターボ
パワー:325ps/6500rpm
トルク:42.9kg-m/3000rpm
ギアボックス:6速マニュアル
乾燥重量:595kg
最高速:261km/h
0-100km/h加速:2.8秒
燃費:WLTP値未公表
CO2排出量:WLTP値未公表