最新992型 ポルシェ911カレラに試乗 385psのRR 素の911という美点

公開 : 2019.09.20 09:50  更新 : 2019.09.20 10:37

低ブースト圧が生むシャープなレスポンス

かつて最もベーシックな911は、甘美なドライビングを味わわせてくれた。小径なタイヤに狭いリアトレッド、柔らかいサスペンション。社会的な速度域でも感覚豊かなハンドリングを味わうことができた。それを踏まえると、最新の911カレラの仕上がりには期待と不安が混ざる。

992型では、Sモデルと同じ46mm広いワイドボディをまとい、フロントトレッドは先代のGT3と同値になった。タイヤサイズは、オプションのフロントが20インチ、リアが21インチという大径を履いていたが、標準なら1インチずつ小さくなる。大きなボディに大きなタイヤだから、一般道を圧倒する走りを叶えている。

ポルシェ911カレラ
ポルシェ911カレラ

385psの3.0Lエンジンは、2019年基準でも不満のない数字だし、ツインターボのコンプレッサーは小径化されておりフィーリングは良い。ブースト圧はカレラSよりも0.3bar低くなるぶん、ターボラグは少なくレスポンスはとてもシャープ。常にふんだんなパワーとトルクを引き出せるから、欲求不満を感じることはないだろう。

回転数の立ち上がりは、重たいフライホイールを付けた自然吸気エンジンのように、後輪へトルクが伝わるまでに一瞬のタメがあり、古い911を彷彿とさせる僅かな金属音を響かせる。だが、走り出せばそのレスポンスは驚異的。7500rpmのレッドライン目がけて、軽快ながら重厚感ある勢いで、容赦なく吹け上がる。

PDKも抜群のでき。変速は瞬間的につながる感覚を伴いながら、スムーズに完了する。つまりパワートレインは秀抜の仕上がりで、実際のパフォーマンスは別として、楽しさという点ではカレラSよりも優れている。まさに下剋上状態だ。

グリップ力が高くシャシーの安定性にも優れ、車内は風切り音やエンジンノイズから切り離されているから、その速さにドライバーは実感がわかないかもしれない。気がつけば160km/hをうっかり超えていた、ということもアウトバーンならありそうだ。

しなやかなサスペンションが生む自由度

フロントよりリアのホイールサイズを大きくすることで、クルマの重心点が前方にやや移動しており、360mmという小径のステアリングホイールを切った方向へ、クルマは苦もなく向きを変える。ステアリングは重いがレスポンスは軽快で、常に直感的に操作できる優れものだ。

つまりすべてが、これまで試乗した最新の992型で得た印象に負けなくらい素晴らしい。正確でニュートラルで、驚くほどに速い。違いは、素のカレラはカレラSほどシリアスではないところ。

ポルシェ911カレラ
ポルシェ911カレラ

PASMスポーツサスペンションを装備したクルマと比較しなければ充分に車高は低く見えるが、やはりサスペンションのトラベル量は大きく、ボディの動きも大きい。そして社会的な速度域での運転感覚は、フィーリングが豊かだという点でカレラSとは異なる。

サスペンションはしなやかに上下し、ブレーキング時に重心がやや前方に移動することで、クルマを操る自由度の制限がゆるくなる。オーバーステアやアンダーステアは、最新の911では忌み嫌う言葉かもしれないが、かなり積極的に走らせたとしても、素のカレラのコーナリング時の滑らかな動きには驚かされる。

後輪操舵は付いていても良い。機敏なクルマをさらにご機嫌にしてくれるし、2速を使うヘアピンでも息を呑むスピードで抜けられる。ただし、個人の好みではあると思う。

低速コナーでフロントタイヤに荷重を移し、リアを少し流してオーバーステアに移すことも可能だ。だがグリップ力を失うことはなく、徐々に外に膨らみ、スリップしながらラインが外に膨らむ程度。サスペンションは柔らかめの設定ながらボディコントロール性が優れているから、挙動はやや急なところもあるものの、一貫性はある。

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