ロードテスト フォード・フォーカスST ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2019.09.21 11:50  更新 : 2019.09.26 00:08

歴代いずれも優秀なドライバーズカーだったフォーカスSTが4代目へと移行。今回も完成度は高いのですが、過ぎたるは及ばざるが如し。過剰なアジリティの演出が、このクルマが見せるべき美点を損ねてしまいました。

はじめに

近年の欧州市場におけるフォードの繁栄ぶりは、とある成功作が世代を追うごとにどう発展してきたかに見て取れる。不朽の名車、フォーカスSTだ。このホットハッチは、今や4世代を数えるが、誕生以来、驚くほど多くの改修や変更が施されてきた。おそらく、これほど手を加えられたライバル車はほぼないはずだ。

初代フォーカスが時代の寵児とばかりにもてはやされる中、2002年に突如出現し、われわれの目を釘付けにしたのがST170だ。やや控えめな173psを発生する2.0L直4を積み、その雰囲気は本格的なハイパフォーマンスのドライビングマシンというより、上級グレードという雰囲気だった。

2代目の登場は2005年。かつてジャック・ナッサーCEO時代に設立されたPAGことプレミアム・オートモーティブ・グループが全盛だった頃のことだ。PAGにはフォード傘下の高級ブランドが集約されたが、ジャガーやアストン・マーティンとともに組み込まれていたのがボルボだ。この北欧ブランドの持つ5気筒ターボユニットが、2代目STの心臓に選ばれ、228psに強化された。

2012年、アラン・ムラーリ体制下で3代目が登場したときには、PAGはすでに姿を消しており、ワン・フォード戦略が進められていた。STのエンジンは2.0Lの4気筒に戻ったが、ターボを得て255psへ増強された。

そして今回は、英ブリジェンドのエンジン工場を閉鎖するなど、事業再編が進む中で、STは4代目へバトンタッチ。エンジンは、アメリカ製ユニットをベースに、欧州でチューニングした2.3L直4が採用された。

このエンジンは、マスタングのそれと同じブロックを用いるが、新型フォーカスSTの見どころはそれだけではない。ファミリーハッチバック市場における稀有な運動性や走りの魅力の持ち主という名声を取り戻すべく、フォードはこれまでフォーカスに装備しなかったような電子制御やメカニズムを投入しているのだ。それらは、追々紹介して行こう。

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