ロードテスト フォード・フォーカスST ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2019.09.21 11:50  更新 : 2019.09.26 00:08

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

このクルマ、どこをとっても野心的だ。これまで、ローンチコントロールやアダプティブダンパー、はたまたフロントの電子制御LSDを備えたフォーカスSTは存在しなかった。新型では、それらをすべて備える。これはフォルクスワーゲン・ゴルフGTIに対抗しうるほど融通の効くクルマであると同時に、強力なグリップや速さ、ハンドリングのレスポンスで歴代フォーカスSTを凌ぐためだ。

サスペンションは、これに次ぐスポーティグレードのSTラインに対して10mmダウンのスプリングを装着。レートはフロントを20%、リアを13%、それぞれ高めている。スタビライザーも前後とも強化され、専用のステアリングナックルやハードなサスペンションブッシュを使用。ホイールは18インチか19インチが選べ、タイヤは235セクションのミシュラン・パイロットスポーツ4Sを履く。その裏側には、電動ブースターを備えるブレーキ系のベンチレーテッドディスクが隠れている。

フォードは歴代STに見られなかった新技術を多数投入して、これまで以上の走りを追求している。
フォードは歴代STに見られなかった新技術を多数投入して、これまで以上の走りを追求している。    LUC LACEY

エンジンは2種類。277psの2.3Lガソリンターボと、190psの2.0Lディーゼルターボが用意される。ボディタイプは、5ドアハッチバックと、エステート(すなわちワゴン)だ。ただし、アダプティブダンパーとフロントのトルクベクタリング付きディファレンシャルを標準装備するのは、ガソリン仕様のハッチバックのみとなる。

今のところ、トランスミッションは6速MTのみの設定だが、7速ATが遠からず追加される見込みだ。ただし、トラック(サーキット)モードと自動ブリッピング機能などを含むパフォーマンスパッケージは、ガソリン+MT仕様に専用設定のオプションとなる。

電子制御LSDのサプライヤーは英国のGKN社で、そのシステムはゴルフGTIパフォーマンスが採用したボルグワーナー製のXDS+にきわめて近い。ベースとなるのは一般的なオープンデフで、これを回避できるバイパス経路となるドライブシャフトとクラッチを設置する。

クラッチをつなげば左右前輪に50%ずつ駆動力を配分し、機械式ヘリカルLSDと同様に機能する。しかし、アクティブ制御システムはパッシブな機械式デフより素早く作動。しかも電子制御系の要求に応じて、正確で巧みなコントロールを行う。

ターボラグを解消する技術が投入されていると聞いたら、グループBのようにテールパイプから炎を吹き出すようなシロモノを期待するかもしれないが、さすがに市販車でそれは無理な相談。このフォーカスSTに用いられたのは、単に吸気ポートをスロットル操作の前に開いておいて、エンジンのレスポンスを高めるという仕組みだ。

このロングストローク気味ななオールアルミのDOHCユニットは、5500rpmで277psを発生。これだけ聞いたら、シビック・タイプR好きのホンダ党は鼻で笑うかもしれない。しかし、3000rpmで42.9kgmと聞いたら、一目置くのではないだろうか。

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