F22型 M2コンペをチューニング ACシュニッツァーACS2 503psに305km/h

公開 : 2019.09.28 09:50

リニアなパワー感で実感の湧かない速さ

目立つボディ・カラーも手伝っているが、BMW M2コンペティションはコンパクトなボディながら、そもそも存在感の強いクルマではある。そこへACシュニッツァーの手が加わり、その押しの強さは明確に増した。車高は明らかに低くなっており、ホイールアーチいっぱいに収まる鍛造20インチ・ホイールが、さらにスタンスを強調する。

インテリアも要所要所に手が加えられているが、好みで選ぶことができる。ロゴ入りのハンドブレーキ・カバーはそのままだが、アルミニウム製のペダルとシフトパドルは交換されている。薄い金属に軽量化のための穴が開けられ、どこかおもちゃっぽく見えるものの使い勝手は良い。

ACシュニッツァーACS2スポーツ・コンペティション
ACシュニッツァーACS2スポーツ・コンペティション

座り心地の良いシートも含めて、すべてはACシュニッツァーの工場製だ。ロールケージやハーネス、余分なアルカンターラは付いていない。

鮮烈な印象を残した514psを誇るE60型のM5もそれほど昔のクルマではない。ほぼ同じ最高出力が、ACS2にも宿っている。セグメントでいえばふたつは小さな部類のクルマだ。直6ターボが生む最大トルクは66.2kg-mに達し、E60型M5に搭載されていたV10ユニットを凌駕する。

実際加速させてみると間違いなくACS2の直線加速は速いのだが、静止状態から161km/hまで8秒でこなすほど、鋭さは感じられない。ベースとなったM2コンペティションと同様に、パワーデリバリーが極めてリニアで、ドラマチックさが薄いためだろう。

エンジンのサウンドはより深みが増し、活気に溢れ、ボリュームも増しているが、どこか鼻に掛かったような音質。回転数を上げても変化が単調なのは従来通りだが、アウトバーンの追い越し車線では躊躇なく240km/hを超える力を秘めている。320km/hも道路が空いていれば届くかもしれない。

生粋のスポーツカーへ生まれ変わった

ベースが優れたM2コンペティションだから、ハンドリングはさらに素晴らしい。リアサスペンションにはボールジョイントが採用され、M2が持っていたテールの不安定さを解消している。また、サスペンションのストロークが半分に減り、重心高が下がったことも明確にわかる。

流石にポルシェケイマンGTSとの比較はできないが、オリジナルのM2コンペティションと比べれば、明確にACシュニッツァーACS2は生粋のスポーツカーといった性格が強くなっている。磨き込まれた足の速いクーペという感じは薄くなり、ピンと張り詰めた雰囲気だ。自宅からの往復も自走でこなせつつ、サーキットでの走行会用に仕上げられたような印象すらある。

ACシュニッツァーACS2スポーツ・コンペティション
ACシュニッツァーACS2スポーツ・コンペティション

中ほどの設定のダンパーは一般道にはかなり硬めで、フロントタイヤのキャンバー角も強めのネガティブ。ステアリングの操舵感は想像以上に重たいが、レスポンスは面白いほどシャープで正確だ。

乗り心地は、滑らかな路面でない限り驚くほどに悪い。速度を上げればダンパーの動きも多くなり、乗り心地は若干改善するものの、低速で走らなければならない場所ではどうしようもない。

滑らかな路面なら、ACS2は一気に輝きを増す。オリジナルよりもグリップレベルが増し、アンダーステアもずっと発生しにくくなっている。簡単に派手なテールスライドへ持ち込め、素晴らしいヨー方向の制御とバランス性が相まって、コントロールもしやすい。驚くべき繊細さでオーバーステアを味わうこともできる。

手動で変えられるダンパーの減衰力を穏やかにし、19インチホイールにダウンすれば、ACシュニッツァーらしい滑らかな乗り心地に変わるはず。リアタイヤの幅は標準と同じ265で設定されているが、懸命な判断だったといえるだろう。もし太くしていれば、クルマの備える「遊び心」はずっと影を潜めてしまったはず。

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